[II-P40-03] 乳児期開心術時に留置した心外膜ペーシングリードが成人期に肺動脈絞扼を来した1例
キーワード:乳児期開心術後遠隔期, 心外膜ペーシングリード, 肺動脈絞扼
症例は30歳女性.当院で1歳時に心室中隔欠損症(VSD)に対し直接閉鎖術が施行した.術後完全房室ブロックを認め,恒久ペースメーカ植え込みを施行した.術後経過観察中に正常洞調律に復帰したため,ペースメーカジェネレーターのみ取り外した.学校検診で心電図異常や心雑音の指摘を受けていたが,自覚症状がなかったため,長期フォローは行わなかった.3年前より労作時に動悸や胸部圧迫感を自覚するようになっていたが,症状増悪はなく,自身で経過観察していた.今回,数日間持続する夜間の動悸と冷汗が出現したため,近医受診し,心房粗動と診断された.電気的除細動が行われ,正常洞調律へ復帰した.心不全の合併が疑われ,精査のため施行した心臓カテーテル検査で,幼児期に留置されたペーシングリードが主肺動脈を圧排し高度狭窄を来している所見を認めた.経胸壁心エコーでは主肺動脈に加速を認め,peak velocityは4.4m/sであった.心不全症状の原因がペーシングリードによる主肺動脈の機械的狭窄であることが疑われ,外科的治療目的に当科紹介となった.手術は胸骨正中切開後,人工心肺下に心外膜ペーシングリードの剥離を予定したが,高度に癒着する心のう膜の剥離とその後の心表面からの出血に対する止血に難渋した.心拍動下に右室心外膜に埋没するペーシングリードを剥離した後,心停止とした.心臓を脱転した後,主肺動脈左側から左室後方へ癒着するペーシングリードを剥離し,摘出した.次に主肺動脈がペーシングリードで圧排された部位を断端形成し,狭窄を解除した.術後の経胸壁心エコーで主肺動脈に軽度加速は残存したが,peak velocityは2.2m/sと術前に比較し改善を認めた.術後経過は良好で,独歩退院となった.本症例の様に幼児期に留置された心外膜ペーシングリードが遠隔期に肺動脈を圧排し絞扼を来すことで心不全の原因となり得るため,症状の有無に関わらず定期的な経過観察が必要と思われる.