[II-P40-04] 当院における小児期機械弁置換術後の遠隔期合併症の検討
キーワード:機械弁, 遠隔期, 抗凝固療法
【背景】小児期の弁膜疾患に対する手術は弁形成術が第一選択であるが、人工弁置換術を余儀なくされる場合がある。しかし置換術後には、成長に伴う弁サイズの不適合、感染症、血栓症、およびワーファリン等の抗凝固療法に伴う出血性合併症が問題となる。【目的】小児期機械弁置換術後の合併症の頻度を明らかにすること。【方法】当院において1993~2018年の25年間に機械弁置換を施行した小児例の術後経過を、診療録より後方視的に検討した。とくに再置換の有無および適応、重大な合併症(血栓症、重篤な出血性合併症、感染性心内膜炎)について精査した。なお当院の機械弁置換例のPT-INR管理目標は2.0~3.0である。また症例に応じてアスピリンを追加している。【結果】対象患者は50例、51弁であり、初回手術時年齢の中央値は3.2歳(2か月~14歳)、平均観察期間は6.3年(最大23年)であった。12例が観察中に死亡し、うち4例は術後退院できずに死亡した。退院した46例中36例(78%)にアスピリンが投与された。基礎疾患は機能的単心室疾患が21例(42%)を占め、うち15例に房室弁置換、5例に大動脈弁置換、1例にその双方に対する二弁置換が施行された。次いで房室中隔欠損症術後の左側房室弁機能異常(10例、20%)が多数を占めた。その他、先天性僧帽弁機能異常が10例、先天性大動脈弁機能異常が7例、乳児特発性僧帽弁腱索断裂が2例だった。全体のうち8例が再置換を要し、その適応はサイズ不適合が3例、血栓弁が4例、弁周囲逆流が1例であった。再々置換例は認めなかった。血栓性合併症として、6例に血栓弁、4例に脳梗塞を生じた。重大な出血性合併症については、3例に頭蓋内出血をきたしたほか、肺出血、上部消化管出血、卵巣出血を1例ずつ生じた。感染性心内膜炎の発生は認めなかった。これら重大な合併症の発生率は5.1%/人年であった。【結語】小児期の機械弁置換術後に、重大な合併症を高率に生じることが示唆された。