[II-P41-04] 完全大血管転位症に対する動脈スイッチ術後の冠動狭窄/閉塞症例の検討
Keywords:完全大血管転位症, 冠動脈, 術後合併症
【背景】完全大血管転位症(TGA)に対する動脈スイッチ術後の合併症の一つに冠動脈狭窄、閉塞がある。その誘因や予後については様々な考察がなされているが未だに明らかになっていない。【目的】当センターにおけるTGAに対する動脈スイッチ術後に冠動脈狭窄または閉塞を認めた症例について検討し、そのリスク因子や診断契機、予後などについて評価する。【方法】1999年2月から2019年1月までの20年間に当センターで行われた動脈スイッチ術を施行されたTGA症例について診療録を用いて後方視的に検討した。【結果】動脈スイッチ後のTGA症例は20年間で計71例であった。そのうち術後に冠動脈狭窄または閉塞病変を認めたのは全5症例(7%)であった。shaher分類は1が2例、4が1例、5Aが2例(うち壁内走行1例)。狭窄/閉塞部位は、前下行枝(LAD)狭窄1例、LAD閉塞1例、回旋枝(LCX)閉塞2例、右冠動脈(RCA)狭窄1例。術後からの診断時期は平均153.2日(1-300日)。診断契機としては、術後初回カテーテル検査3例、術翌日の心電図変化1例、退院後外来での心電図変化および心機能低下1例。フォローアップ期間は平均61.4ヶ月(13-145ヶ月)。予後は最終外来受診時において4例が異常所見なし、1例が心エコー上、左室下壁から後壁の心内膜の輝度亢進およびdyskinesisを認めた。【考察】TGAにおける動脈スイッチ後の冠動脈狭窄または閉塞症例の特徴としては冠動脈走行異常が多く既知の報告通りであった。また、診断契機として術後初回のカテーテル検査で判明する症例が多く、心電図や心エコーでは異常を指摘されず、判断に苦慮する場合がある。冠動脈の異常を有しながらも予後は良好な症例が多く、他の冠動脈からの供給でも通常の心機能が保たれる傾向にあるが、運動時などに症状が出現する可能性もあり今後も十分な経過観察が必要と考える。