[II-P43-04] CRT super responderであった乳児期発症心筋症例の遠隔期における評価
Keywords:拡張型心筋症, 心臓再同期療法, Vector Flow Mapping
【背景】小児DCMに対するCRT導入の要否や長期予後については知見に乏しい。今回、乳児期早期発症のDCMで、CRT導入後に劇的な心機能の回復を見た児の治療後遠隔期の評価を行った。心エコーにおいて、血流成分と壁運動情報から得られた血流速度ベクトルを用いるVector Flow Mapping (VFM)による解析を交え報告する。【症例】11歳男児。生後1か月より体重増加不良をみとめ、5か月時の心エコーで左室収縮能低下(EF=13%)と内腔拡大を認めDCMと診断した。心電図はCLBBBであった。薬物治療の効果は乏しく、エコー上明らかなdyssynchronyが存在したため、1歳4か月時にCRTを開始した結果、心不全症状は劇的に改善し、BNP・心エコー所見とも術後1年時には正常化した。治療後9年以上の経過を通じてNYHA分類I度で心不全治療は要さず、心エコー所見やBNPも悪化なく経過している。今回、CRT on/offそれぞれにおける心電図および心エコー評価を行った。CRT中断により、心電図はQRS=100msから130msのCLBBBとなり、心エコーでは左室EFは77%から62%へ低下、左室Tei indexは等容収縮期延長により0.43から0.89へ増悪した。VFMでは、CRT中断により1心拍あたりのenergy lossは34%増大した。左室内の1点との圧較差を算出するrelative pressureは、流入路、流出路いずれにおいても、CRTの中断による圧較差の変化を認めなかった。【考察】今回の検討で、CRT super responderの遠隔期においても依然としてCRTが血行動態維持に重要であることが示された。VFM解析で得られたCRT中断に伴うenergy lossの増大は、既報から拡張期から収縮期にかけての左室内の渦の滞留によるエネルギー効率の低下によると考えられた。等容収縮期のenergy lossはその時間におけるrelative pressureの減少につながると予想されたが、今回の検討では明らかな変化を認めなかった。CRT導入の要否や有効性評価にVFMが有用な可能性があり、今後も症例の蓄積が必要と考えられる。