[II-P43-06] マラソン後心肺停止で下肢横紋筋融解を合併し、両大腿切断で救命し得た拡張型心筋症の1例
Keywords:心肺停止, 下肢横紋筋融解, 拡張型心筋症
【はじめに】運動後の心肺停止にrigor-mortis様筋硬直を合併し、下肢切断を経て救命した報告はない。【症例】14歳男児。14kmマラソンのゴール直後に心停止し、bystander CPR、AED装着(初期波形はpulseless electrical activity(PEA))下で救急要請された。10分後の当院搬入時もPEAが持続しており、直ちにextracorporeal membrane oxygenation(ECMO)の適応と判断し、挿管管理下で来院12分(救急要請から22分)後にV-A ECMOを確立した。同時に両下肢のrigor mortis様の強い硬直、高K血症 (9.7mmol/l)を認め、筋弛緩剤投与後も変化がなかった。CHDF及びIABPを併用してICU管理を開始した。2病日にIABPを離脱したが、両下肢の横紋筋融解によりCPK が80万U/lに増加、3病日には呼吸・循環動態の増悪を伴い、救命のために両大腿切断術を施行した。同日夜から開眼、4日には掌握従命に反応あり、5病日に気管切開、6病日にECMOを離脱した。18病日に気切カニューレを抜去し、19病日にCHDFを離脱し、21病日にICUから小児科病棟に移動した。重度の心不全が持続しLVDd 55-60mm、LVEF 30%前後、VT 8連発を認めβ遮断薬、利尿剤、ACE阻害薬を導入したが心機能改善には至らず、BNP 170pg/ml、心筋シンチでは左室EF 16%とびまん性の壁運動低下を認めた。神経学的後遺症はなく、VTも消失したため退院に向けてのリハビリを積極的に行うことができた。134病日に心臓精査のため大学病院へ転院して拡張型心筋症が確定され、150病日にS-ICDを挿入した。内服調整後187病日にback transferとなり体調管理及び今後の調整を行い、205病日にリハビリ病院へ転院し義足歩行練習を行っている。【結語】心肺停止時に下肢のrigor-mortis様硬直を合併した拡張型心筋症の重症例であったが、bystander CPRがあり、来院後速やかにECMOを導入したこと、時期を逃すことなく両下肢切断を決断したことが神経学的後遺症のない救命に繋がった。