[II-P44-02] 乳児期発症ミオパチーに合併した心筋緻密化異常の病像
Keywords:緻密化障害, ミオパチー, 病理
【緒言】心筋緻密化異常(NCCM) の典型像は、心室壁の発生・成熟の障害による「胎生期」異常である。しかし一方で、「出生後」の進行性筋萎縮・壊死を特徴とする遺伝性筋疾患にも、NCCMが合併することがしばしば報告されてきた。MYL2ミオパチーという、過去10数例の報告のみの稀少ミオパチーは、NCCMの指摘の一方で、その病理像の詳細な記述を欠いていた。【症例】1歳女児。両親はともに健常、姉は乳幼児期に拡張型心筋症で死亡した。児は生後5ヶ月時に定頸の遅れを契機に精査され、近位筋優位の骨格筋萎縮・筋力低下、心機能異常があり、原因不明の筋疾患として通院中だった。遺伝学的解析の結果、少数の既報例と臨床像がよく合致するMYL2遺伝子の劣性変異を認め、MYL2ミオパチーと診断された。骨格筋の症状に比し心筋症として重症であり、左室駆出率は約40%だが高度の拡張不全を伴う心筋症を呈していた。生後11ヶ月時に心不全の増悪があり、集中治療管理を要したが治療の甲斐なく1歳1ヶ月で死亡した。病理解剖では、骨格筋にMYL2ミオパチーに典型的なtype-specific atrophyを認め、心臓は乳頭筋の形成が不明瞭で、加えて、非緻密層(NC)に比し緻密層(C)が菲薄化しNCCMを思わせる壁構築異常を認めた(NC/C=1.6)。一方で、同じく重症NCCMのBarth症候群患者の末期病理像と比較し、内鞘線維化の著しい進行が認められ、進行性心筋萎縮・壊死を背景とした置換性線維化の所見と考えられた。【考察】NCCMと区分される心筋症の中には、胎生期の緻密化障害と、後天的リモデリングの末に起きた壁構築異常とが混在している。従来のマクロ形態に基づくNCCM診断から一歩進んで、分子病態を見据える試みが重要である。