[II-P45-02] 健常乳児への医療関連感染が疑われた感染性塞栓合併MRSA感染性心内膜炎の一例
Keywords:感染性心内膜炎, 医療関連感染, MRSA
【背景】基礎疾患のない小児に感染性心内膜炎(IE)を生じることは少なく、中でも医療関連感染は極めてまれである。【症例】10か月女児。下痢が続くため前医に急性胃腸炎の診断で入院し、末梢点滴管理されていた。入院4日目に発熱と全身性痙攣を認め、その後指趾斑点、右上下肢の運動制限を認めた。MRIで右股関節炎を認め、入院8日目にドレナージ術施行。血液培養と関節液からMRSAが検出された。バンコマイシンに変更されたが血液培養は陰性化せず、入院11日目に再度痙攣を認め、多発脳梗塞・脳膿瘍を認めた。心エコーで僧帽弁前尖に有茎性疣贅と中等度僧帽弁逆流を認めたため、感染コントロール・IE治療目的で入院12日目に当院に転院。リネゾリドおよびテイコプラニンに変更したが、転院3日目に右半身の痙攣を認め、新規脳梗塞及び多発脳塞栓・脾腎梗塞あり、疣贅の形態も変化した。血液培養の陰性化が図れたこともあり、転院7日目に疣贅除去及び僧帽弁形成術(人工腱索法)を行った。僧帽弁逆流は軽度となり、脳膿瘍も内科的治療のみで治癒したが、股関節炎に対しては頻回のドレナージ術を要し、右大腿骨の病的骨折を生じるなど慢性骨髄炎となった。12週間の静中治療後、リネゾリドとリファンピシンの内服に切り替え、転院91日目に退院した。免疫学的検査でIgAが低値の時期を認めたが、急性期には正常値であり、免疫不全を示唆するものは認めなかった。【考察】基礎疾患のない乳児にも医療関連感染IEが引き起こされることがあるため、医療者は十分留意しなければならない。