[II-P45-03] 広範な脳梗塞を合併した正常心の感染性心内膜炎に対し早期手術を行った二例
キーワード:感染性心内膜炎, 脳梗塞, 早期手術
【はじめに】感染性心内膜炎(IE)の早期の手術適応は心不全、治療抵抗性の感染、進行性の塞栓症であるが、広範な脳梗塞を合併した場合の手術時期に関しては明確な基準がない。今回、正常心の小児IEに左中大脳動脈(MCA)領域の脳梗塞を合併し早期手術を行った二例を報告する。【症例1】1か月女児。活気不良、哺乳不良で受診。僧帽弁に10mm大の腫瘤性病変を認め、血液培養からB群溶血性連鎖球菌が検出、IEと診断。初診時の頭部CTでMCA領域の広範な脳梗塞あり抗菌薬投与を開始。第3病日に血液培養の陰性化と術前日の頭部CTで脳出血がないことを確認し、第9病日に腫瘤摘出術および僧帽弁置換術を施行。術後の頭部CTで出血はなく、現在術後2年経過し右上肢の不全麻痺が残存。【症例2】2歳男児。発熱、意識障害、足底の出血斑を認め当院搬送。僧帽弁および左側の心室中隔に10mm大の腫瘤性病変あり、血液培養から黄色ブドウ球菌が検出、IEと診断。頭部MRIで左MCA領域、右前頭葉、頭頂葉に脳梗塞あり、造影CTで両側腎梗塞、脾梗塞、右腓骨動脈塞栓を合併。抗菌薬投与を開始し48時間後に血液培養は陰性化したが、経過中に新規の腎梗塞を発症。頭部CTで出血がないことを確認し第7病日に腫瘤摘出術および僧帽弁形成術を施行。術翌日の頭部CTで軽度の出血性梗塞があったが、神経学的所見の増悪はなく術前からの右上下肢麻痺、右同名半盲、失語は残存しリハビリ中。【考察】頭蓋内合併症を伴うIEでは術中脳出血のリスクがあり手術時期については慎重に判断する必要がある。しかし、近年は頭蓋内出血を除く中枢神経合併症への早期手術は新たな塞栓症の発症を抑えかつ神経学的予後、死亡率に有意差はないとしている。今回、広範な脳梗塞を合併したIE二例に対し早期手術を行い、一例は術後に出血性梗塞を認めたものの、二例ともに術前と比較して明らかな神経学的所見の増悪なく経過した。今後も可能な限り早期手術を目指す。