[II-P47-03] 経口PGE1製剤の導入により自宅退院可能となった左室低形成合併トリソミー18
キーワード:トリソミー18, 左心低形成症候群, 経口PGE1製剤
【背景】動脈管依存性心疾患に動脈管拡張目的でPGE1-CDあるいはLipo-PGE1が使用される.これらの製剤は入院での持続静注を要する.私たちは経口PGE1製剤を導入し自宅退院できたトリソミー18症例を経験した.【症例】日齢0,女児.近医で妊娠管理され,在胎34週から胎児発育不全を認めていた.在胎39週5日に出生し,低出生体重(1,985 g)のため当院NICUに搬送された.特異的顔貌,股関節拘縮,およびゆり椅子状足底からトリソミー18を疑い,染色体検査で確定診断した.入院時の心臓超音波検査で左室低形成,大動脈弁下および弁狭窄,大動脈低形成,心室中隔欠損,心房中隔欠損と診断した.動脈管依存性の血行動態と判断し,Lipo-PGE1持続静注および低酸素療法を開始した.家人は積極的な外科的治療を希望しなかったが自宅退院を希望したため,日齢32から経口PGE1製剤であるリマプロストアルファデクス(LA)を2.5 ng/kg/日から開始した.動脈管形態を経時的に評価しながらLAを漸増し,日齢81にLipo-PGE1を漸減中止した.最終的にLA 10 ng/kg/dayで血行動態は安定した.日齢107に低酸素療法を離脱でき,日齢115に自宅退院した.【考察】従来の経口PGE2製剤は血中半減期が短く,持続あるいは頻回投与が必要であった.LAは経口PGE2製剤に比し半減期が長いため,自宅でも使用可能である.トリソミー18などの予後不良の先天性疾患においては,合併奇形の積極的な修復よりも,支持療法が重視される.経口PGE1製剤は動脈管依存性心疾患合併トリソミー18の退院率を向上する一助となる可能性が示唆された.