[II-P48-03] 胎児重複大動脈弓7例の検討
Keywords:重複大動脈弓, 胎児, 血管輪
【背景】重複大動脈弓(DAA)は2本の動脈により気管や食道が圧迫される先天性疾患で出生直後より重篤な呼吸障害を呈す症例もある。我々は以前に胎児DAA3例の胎児エコー所見と出生後の経過を比較し報告したが、出生後の症状に寄与する胎児エコー所見は明らかにならなかった。【目的】症例を集積し出生後早期の有症状群(A群)と無症状群(B群)における胎児期の有用な観察項目を検討した。【方法】対象の胎児エコー所見と出生後経過を後方視的に検討した。胎児期観察項目は、気管断面積(TA)と血管輪内腔断面積(VRA)の比率(TA/VRA)、左側大動脈弓と右側大動脈弓の上行大動脈分岐部の角度(aAA)と下行大動脈流入部の角度(dAA)、VRの短径(short diameter)と長径(long diameter)の比率(S/L)とした。症状は呼吸障害と嚥下・通過障害の有無を確認した。A群とB群においてMann-Whitney検定を用いて観察項目の単変量解析を行った。【結果】対象となったのは胎児診断したDAAの7例。7例中A群3例(42.9%)、B群4例(57.1%)だった。A群の内1例目は出生直後に強い呼吸障害を呈し人工呼吸器管理を施行した。2例目は日齢7より強い吸気性喘鳴を認め、3例目は日齢7より哺乳時の喘鳴を認めた。7例全例血行動態修復術を施行し、施行時期は日齢0-23(中央値14)だった。観察項目の中央値は、TA/VRAはA群0.102、B群0.092、aAAはA群48°、B群76°、dAAはA群50°、B群85°、S/LはA群0.36、B群0.72だった。さらに呼吸器症状の強かった2例はaAAとdAAが小さく、S/Lが低値である傾向があった。【考察】胎児エコー所見でaAA、dAA、S/Lは有用な観察項目と考えられた。今後症例を集積し、また他の観察項目も加え胎児所見で出生後の重症度を予測する指標を確立したい。