第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

胎児心臓病学

ポスターセッション48(II-P48)
胎児心臓病学 2

2019年6月28日(金) 17:30 〜 18:30 ポスター会場 (大ホールB)

座長:新居 正基(静岡県立こども病院 循環器科)

[II-P48-04] 胎児エコーで診断した動脈蛇行症候群の一例

石戸 博隆1, 馬場 一憲2, 岩本 洋一1, 増谷 聡1 (1.埼玉医科大学総合医療センター 小児科 小児循環器部門, 2.埼玉医科大学総合医療センター 産科)

キーワード:胎児診断, 動脈蛇行症候群, 大血管

【はじめに】動脈蛇行症候群(aortic tortuosity syndrome, ATS)は、動脈、特に腹部大動脈の動脈蛇行と、結合組織異常をきたす疾患で、血管病変により急性発症する可能性がある。胎児診断例はほとんどなく、胎児期からの自然歴も明らかでない。我々は胎児心エコーで大動脈の極端な屈曲蛇行により診断した動脈蛇行症候群を経験し、フォローを行ったので、報告する。
【症例】母36歳、G1P0。Marfan症候群類縁疾患等の家族歴はない。前医の妊娠中期スクリーニングにて腹部大動脈の蛇行を指摘され、在胎28週3日に当科を初診。児の発育は終始良好で、心構造奇形を認めなかったが、大動脈は胸部で左側を下行し、横隔膜直下レベルで右下前へ、そして左上後へと極端に屈曲蛇行するのが確認された。蛇行の前後で明らかな狭窄や拡張はなく、また蛇行部以遠の異常な血流加速やVTIの低下は認めなかった。満期で仮死なく出生し、身体所見の異常を認めなかった。2歳2か月で撮像した大動脈3D-CTで胎児診断を再確認し、さらに次の所見を得た。横隔膜直下の下行大動脈から1)上腸間膜動脈+腹腔動脈、2)左右腎動脈、3)腹部下行大動脈の4本が直接分岐しており、3)は後左上方へ分岐したのち脊柱の左側を下行していた。また1)‐3)それぞれの起始部に軽度のくびれを認めた。現在2歳7ヶ月、下肢の血行は良好で、発育/発達も正常である。
【考按・結語】本症例は現時点で皮膚過伸展・筋緊張低下・関節弛緩などを有さず、動脈異常のみであるが、今後、年齢経過とともに腹部大動脈瘤や高度狭窄への進展のリスクがあり、十分な注意が必要である。胎児期に大血管の走行についても注意を払うことの重要性が強く示唆された。