[II-P53-02] 先天性心疾患術後慢性期における心電図P波は予後を反映する可能性がある。
キーワード:心電図, 予後, P波
【背景】心房圧や容量負荷、動脈血酸素飽和度の低下、肺動脈楔入圧上昇など様々な病態に応じて心電図上のP波波形は変化している。しかし、日常診療においてQRS波やST-T波と比較してP波に向けられる関心は決して多いとは言えない。ことに小児先天性心疾患患者において、P波と、心機能や予後との関係については未だ十分に解明されているとは言えない。【目的】先天性心疾患術後患者におけるP波の予後予測性に関して評価すること。【方法】当センターにおける術後5年以上経過した先天性心疾患慢性期患者442名(ASD, VSD, PDA, TOF 213名、機能的単心室症22名、その他TGA、cAVSD、ASRなど弁膜症:ただし逆位の症例、フォローアップ中断した症例は除外した)を2010年から9年間前方視的に考察した。P波の解析は、標準12誘導心電図を用い、P波の最大波高(P+)、V1における陰性P波波高(P-)、P波幅(Pdur)、P波の電気軸(Pax)、P波高xP波幅の積(DP+)およびV1陰性P波波高xP波幅の積(DP-)を抽出し、患者を層別化した後、経過中の治療介入の有無や死亡の有無、症状の有無を主要なoutcomeとして解析した。【結果】P+>250μVの場合、有意に症状が出現したり治療介入が必要であった(28.5% vs. 100%)。P-<-50、-100、-150μVの絶対値に比例して、有意に症状が出現したり、治療介入が必要であった(27.3% vs. 38.7% vs. 100%)。Pdur>100ms、120ms、140msに比例して、有意に症状が出現したり治療介入が必要であった(23.3% vs. 36.4% vs. 100%)。DP+>625μV・ms、DP-<-125、-250、-500μV・msの絶対値に比例して、有意に症状が出現したり治療介入が必要であった(27.3% vs. 38.7% vs. 100%)。一方でPaxには有意な所見を認めなかった。【結語】先天性心疾患術後慢性期において、P+>250μV、P-<-150μV、Pdur>140ms、DP+>625μV・ms、DP-<-500μV・msは心疾患の重症度および治療介入を予知する指標となりえる。