[II-P53-05] てんかんに対してのキニジン治療でショックと著明な徐脈をきたした一例
Keywords:不整脈, ショック, てんかん
【背景】キニジンは致死的不整脈の予防薬として再注目されている。一方で小児領域での投与報告は少なく、投与量や副作用に関しての報告は少ない。今回、抗てんかん薬としてキニジンでの加療を行ない、血中濃度が中毒域以下にも関わらずショックを来たし、加療した症例を経験した。【症例】2歳8kg男児。月齢1から不機嫌が出現し、月齢2で痙攣様の動作が出現し、乳児期早期てんかん性脳症と診断した。後日、KCNT1にde novoのミスセンス変異を認め月齢9から抗てんかん薬として有効であるとされるキニジンの投与を2mg/kgで開始した。フェニトインを併用していたためか、血中濃度の上昇が乏しく、薬物血行動態を把握するため1日に複数回の血中濃度測定を行ない、peak値、trough値を確認した。最大100mg/kgまで漸増することで有効血中濃度(当院では2-6μg/ml)に達し、痙攣を抑制することができた。胃食道逆流に対するNissen、胃瘻造設術を施行後、一旦中止していた注入栄養を再開したところ、注入後の血圧低下にも関わらずHR50-60bpmの徐脈を認め輸血、カテコラミン投与などの処置を必要とした。その際のキニジン血中濃度は3.9μg/mlであった。キニジンを中止後、血圧は安定し徐脈は改善した。【考察】本症例では頻回の血中濃度測定を行ない、中毒域を逸脱することは無かった。ホルター心電図で総心拍数を振り返ると徐々に徐脈傾向となっていた。今回のエピソードは血圧低下に対しての心拍応答が不良であり、キニジンが自動能を抑制したことが一因と考えた。有効血中濃度内でも組織濃度は上昇し本症例のように徐脈となる可能性も有り心電図やホルター心電図の経時的な評価も重要である。【結語】キニジン投与中にショック、徐脈を来たし昇圧剤を含めた集中治療を必要とした一例を経験した。キニジンでの加療中は血中濃度のみならず心拍数や心電図変化、血圧などの変化を考慮した評価および管理が重要である。