[II-P55-04] 小児病院の移行問題~小児病院連絡協議会のアンケート調査~
キーワード:移行, 小児病院, アンケート調査
現在私たちは、先天性心疾患患者の移行について、提言やガイドラインを手にしており、「理想的な移行」について考える機会を得ることができるが、実際の移行の状況や問題点を十分には把握できてはいない。 小児病院連絡協議会は、毎年、小児循環器学会の会期中に小児病院の関係者が集まり、日常の診療における問題について意見交換をする場であるが、2018年の会議において、移行についてのアンケート調査を実施した。これにより、18施設の小児病院の現状と問題点をある程度把握できたので、報告する。 成人患者がほぼ成人施設に転院しているのは7施設、他は小児施設内で成人外来などを設けるなどして診療を続行していた。一方で、13施設の医師が、タイミングは病状や疾患によって流動的にする必要はあるが、一定の年齢になれば成人施設への転院が望ましく、また、14施設の医師が、小児病院で診療続行可能と思われる年齢の上限は20~30歳までと考えていた。しかし、複雑な心疾患の場合には、約半数の施設の医師が、カテーテル検査や再手術のことを考えて併診が望ましいと感じていた。また、病院全体のシステムとして看護師が移行に関与しているのは3施設に留まっていた。移行期・成人期患者の日常診療で困難を感じる点は、小児病院にない科の受診が必要となる場合の対処、患者が社会生活上抱える問題が増え精神心理面での支援を必要とするものの、日常診療の中で対応できないこと、入院環境、人員不足、施設内や地域での理解不足、などがあった。小児病院の中には、独立型と成人施設併設型があり、また地域によっても抱える問題が多様であり、移行問題を考える際には個別の事情を念頭に置かなければならないことも明らかになった。一方、半数の施設で内科医との協力体制が進んでおり、今後は、一部の努力に頼るのではなく施設・地域全体で移行の問題を考えるよう周囲への働きかけが重要な課題となっていくと思われた。