[II-P56-02] フォンタン術後に合併した先天性門脈体循環シャントに対しバルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術 BRTO を施行した1例
Keywords:FALD, 門脈体循環シャント, BRTO
【背景】Fontan術後遠隔期の合併症として,Fontan Associated Liver Disease(以下FALD)の報告が増えている.FALDでは肝硬変を合併し,代償的に二次性門脈体循環シャント(以下aPSS)を合併するが,先天性門脈体循環シャント(以下cPPS)との鑑別は難しい.FALDに合併したPSSに対し,Balloon occluded retrograde transvenous obliteration(以下 BRTO)にて閉鎖した1例を報告する.
【症例】24歳男性,僧帽弁閉鎖,両大血管右室起始、肺動脈狭窄.9歳時に両方向性グレン手術及び心外導管型TCPCを一期的に施行.16歳頃から総ビリルビン 2mg/dL台と上昇した.22歳のときにNH3 100台の高アンモニア血症と指摘され,心臓カテーテル検査でCVP 15mmHgと高値であった.経過からFALDと診断した.Child分類B型の肝硬変と考えられ,肝生検を行ったが,肉眼所見及び病理所見は正常に近い組織像であった.また腎静脈に還流する2型のPPSを認めた.PPSは,形態からcPPSと考えられたが,aPPSの可能性も否定できなかった.PPSの閉鎖試験では門脈圧の上昇は無く,当初はAVP-IIでの閉鎖を計画した.しかしAVP-IIでは脾静脈からの流入路まで閉塞できないため,胃静脈瘤の悪化が懸念された.そこでBRTOを施行した.治療後,総ビリルビン及びNH3は低下しており,経過は良好である.
【考察】FALDの成因は不明だが,高いCVPによる肝還流圧の低下という機序が考えられる.このような症例にcPPSを合併した場合には,Fontan術後遠隔期にcPPSが発達し,総ビリルビンや高アンモニア血症で診断にいたることが推察される.ただし不可逆的な肝硬変において代償的に形成されたsPPSについては,治療を行うことで胃静脈瘤を増悪させる懸念がある.本症例のように,cPPSとsPPSの鑑別に苦慮する場合,sPPSに対する姑息的治療として用いられるBRTOは治療後の合併症のリスクを減らす.
【結語】FALDに合併したcPPSに対し,BRTOはより安全に施行できる治療である.
【症例】24歳男性,僧帽弁閉鎖,両大血管右室起始、肺動脈狭窄.9歳時に両方向性グレン手術及び心外導管型TCPCを一期的に施行.16歳頃から総ビリルビン 2mg/dL台と上昇した.22歳のときにNH3 100台の高アンモニア血症と指摘され,心臓カテーテル検査でCVP 15mmHgと高値であった.経過からFALDと診断した.Child分類B型の肝硬変と考えられ,肝生検を行ったが,肉眼所見及び病理所見は正常に近い組織像であった.また腎静脈に還流する2型のPPSを認めた.PPSは,形態からcPPSと考えられたが,aPPSの可能性も否定できなかった.PPSの閉鎖試験では門脈圧の上昇は無く,当初はAVP-IIでの閉鎖を計画した.しかしAVP-IIでは脾静脈からの流入路まで閉塞できないため,胃静脈瘤の悪化が懸念された.そこでBRTOを施行した.治療後,総ビリルビン及びNH3は低下しており,経過は良好である.
【考察】FALDの成因は不明だが,高いCVPによる肝還流圧の低下という機序が考えられる.このような症例にcPPSを合併した場合には,Fontan術後遠隔期にcPPSが発達し,総ビリルビンや高アンモニア血症で診断にいたることが推察される.ただし不可逆的な肝硬変において代償的に形成されたsPPSについては,治療を行うことで胃静脈瘤を増悪させる懸念がある.本症例のように,cPPSとsPPSの鑑別に苦慮する場合,sPPSに対する姑息的治療として用いられるBRTOは治療後の合併症のリスクを減らす.
【結語】FALDに合併したcPPSに対し,BRTOはより安全に施行できる治療である.