[II-P56-03] フォンタン手術後遠隔期に合併した重症の慢性静脈不全症に対し,静脈抜去術を要した1例
Keywords:フォンタン手術, 遠隔期, 慢性静脈不全症
【背景】フォンタン手術が単心室血行動態患者に行われるようになり、QOLや生命予後は著しく改善し、フォンタン術後の成人患者の数は増加している。一方で術後フォンタン循環に伴う様々な遠隔期合併症が報告されており、それら合併症に対し適切に管理することが重要である。心不全、不整脈、血栓・塞栓症、タンパク漏出性胃腸症、肝線維症、内分泌・代謝異常等の合併症に関する認識は進み、適切に管理されるようになってきている。しかし、慢性静脈不全症はフォンタン手術後の合併症として比較的頻度が多いにも関わらず、過去の文献報告はあまり多くなく、その病態に関して十分な認識がなされていないのが現状である。我々はフォンタン術後遠隔期に合併した重度の慢性静脈不全症に対し、静脈抜去術を施行し、良好の経過が得られた症例を経験したので、その病態および治療方法に関して考察を交えて報告する。【症例】35歳男性、先天性右室低形成、三尖弁狭窄症に対し、23歳時にフォンタン手術(TCPC)を実施され、外来で定期的にフォローされていた。32歳頃から両下腿の浮腫、褐色色素沈着、下肢静脈怒張が強くなり、左下腿に潰瘍を生じるようになった。患部の保湿、ステロイドの外用、下肢の挙上、圧迫ストッキングの使用等保存的に管理されていたが、難治性であり、左下腿の潰瘍部位から400-500mlの出血を認め、当院を緊急受診した。圧迫で止血可能であったが、慢性静脈不全症に対する保存的加療は困難と判断され、35歳時に左下肢静脈瘤に対し、静脈抜去術、硬化療法を実施された。その後潰瘍、下腿浮腫は改善した。【考察および結語】フォンタン手術後は健常者と比較し、慢性静脈不全を合併しやすい。多くは軽症だが、本症例のように外科的加療が必要なケースもあり、対応が遅れると出血や感染等生命にかかわる重篤な合併症を併発するリスクがあり、その病態の理解、適切な治療が必要である。