[II-P57-04] 当院の川崎病患者におけるA群溶連菌迅速検査についての検討
キーワード:川崎病, A群溶連菌, 迅速検査
【背景】川崎病はA群溶連菌(Streptococcus pyogenes、以下GAS)感染症との鑑別が重要だが、GAS迅速検査は偽陽性をしばしば経験する。また、GAS迅速検査の偽陽性によって川崎病がGAS咽頭炎と診断され、治療が遅れる症例も存在する。【目的】川崎病患者におけるGAS迅速検査と咽頭培養検査の結果を検討し、川崎病におけるGAS迅速検査の意義を考察する。【方法】2015年1月1日から2017年1月31日の期間に当院で初発の川崎病の診断・入院加療を受けた症例を後方視的に観察し、当院でGAS迅速検査施行した症例を対象に、迅速検査の陽性例、陰性例それぞれで来院前抗菌薬投与の有無、咽頭培養の結果を検討した。【結果】上記期間に当院で初発の川崎病と診断された223例中、GAS迅速検査が当院で施行された症例は154例であった。GAS迅速検査が陽性の症例は24例で、来院前抗菌薬の投与が確認された症例が11例、未投与の症例が13例であった。13例中12例で咽頭培養が提出されていたが、GASが検出された症例はなかった。GAS迅速検査が陰性の130例中、来院前抗菌薬が未投与の症例は86例、咽頭培養は67例で提出されていたが、GASが検出された症例はなかった。GASが咽頭培養で検出された症例は1例のみで、抗菌薬投与後で迅速検査陰性の症例であった。【考察】当院の川崎病患者において、抗菌薬が未投与でGAS迅速検査が陽性であった症例で、GAS感染症が咽頭培養で証明された症例はなかった。また、GAS感染症が川崎病患者で証明される確率は極めて低かった。GAS迅速検査は一般的に感度約90%、特異度95%以上と言われている。これはGAS感染症の流行期に特有の咽頭所見を有する症例での感度、特異度であり、今回の検討では川崎病を疑う症例に感染スクリーニングとしてGAS迅速検査を行ったため差異が生じたと考えられる。【結論】川崎病を疑う症例では、GASの流行状況がなければ、GAS迅速検査が陽性であっても川崎病治療を並行して行うべきである。