[II-P58-02] 遠隔期に無症候性心筋梗塞をおこした川崎病冠動脈瘤症例の管理について
キーワード:川崎病冠動脈瘤, 遠隔期, 心筋梗塞
【背景】川崎病性冠動脈瘤の管理・長期予後については症例の集積段階で、いまだ不明な点が多い.今回、遠隔期に無症候性に陳旧性心筋梗塞を起こした症例を経験したので、症例の経過と今後の管理方針について考察する.【症例】21歳男性.喫煙歴あり.飲酒歴なし.現在まで生活習慣病の指摘はない.4歳時に川崎病に罹患.急性期は免疫グロブリン療法を2回施行し,心筋炎の合併もみられ,有熱期間は14日間であった.心エコー検査で左冠動脈Seg6領域に壁在血栓を認め,血栓溶解療法を施行し,血栓除去を確認した.また右冠動脈Seg2領域に径7mmの拡張が見られた.退院時心機能は良好であったが,Seg2領域の冠動脈病変は瘤を形成し,アセチルサリチル酸とワルファリンカリウム(PT-INR:2.0-2.5)で以後加療継続していた.16歳の冠動脈CT検査ではSeg2は径10mmの巨大冠動脈瘤となり,全周性に石灰化を認めたが,末梢血管の描出は良好であった.19歳までの定期受診では虚血所見を認めなかった.20歳時の心エコー検査で左室心尖部壁運動低下を認め,心電図検査で陰性T波を認めた.心臓MRI検査で同部位の遅延造影陽性を認め,無症候性の虚血性変化と判断し,冠動脈造影検査施行した.右冠動脈造影でSeg2領域の表在性全周性の石灰化を認めたが,有意狭窄はなく,脂質血栓も認めず,末梢への血流は良好であった.左室造影では右冠動脈Seg4領域での壁運動低下があり,遠隔期に無症候性陳旧性心筋梗塞を起こしたと診断した.【考察】川崎病冠動脈瘤では成人の動脈硬化症の粥腫とは違い,脂質血栓を認めず,本症例でも同様の所見であった.冠動脈造影検査で有意狭窄は認めなかったが,末梢灌流領域での心室壁運動低下と,心電図検査での虚血性変化の所見を認めた.適切な抗凝固療法施行下でも心筋梗塞を起こしており,さらに厳重な管理とその他抗血小板薬の追加などについて検討する.