[II-P58-03] 川崎病における冠動脈病変の予測に関する検討 -高血圧と大動脈弁逆流に注目して-
Keywords:川崎病性冠動脈瘤, 高血圧, 大動脈弁逆流
川崎病(KD)における冠動脈病変(CAL)の成因は、動脈の既存構築が破壊され、その部位が圧に対して脆弱となることによるとされる。従って炎症の程度や急性期の血圧が関連しているとの仮説のもと、当科の経験例を後方視的に検討した。【方法】KD治療は1st lineでIVIG+ASA (肝障害あればFP)を行い、1st line開始後48時間以降も解熱を認めない場合は2nd lineとしてIVIG+pulsed mPSL+UTIを施行した。2017年12月から2019年1月までのCALを伴わないKDのうち1st lineのみで治癒した15例(CALなし1st群)および2nd lineまで施行した11例(CALなし2nd群)、2013年以降に急性期より観察しCALを認めた7例(CALあり群)を対象とした。検討項目は、群馬大学(小林ら)のスコア、最高収縮期血圧、大動脈弁逆流、冠動脈最大Z値とした。また、最高収縮期血圧と冠動脈最大Z値の相関関係を調べた。【結果】群馬大学(小林ら)のスコアは、CALなし1st群に対してCALなし2nd群が有意に高かった。最高収縮期血圧は、CALなし1st群に対する CALなし2nd群、CALなし1st群に対する CALあり群、は有意に高かった。大動脈弁逆流および冠動脈最大Z値は、CALなし1st群に対する CALあり群、CALなし2nd群に対する CALあり群、は有意に高かった。最高収縮期血圧と冠動脈最大Z値は弱い正の相関を認めた。【考察】群馬大学(小林ら)のスコアは全身の炎症を反映していると考えられたが、CALの予測に有用とはいえなかった。血圧は群馬大学(小林ら)のスコアと類似し、CALより全身の炎症を反映している可能性がある。また大動脈弁逆流および冠動脈最大Z値は全身炎症よりCAL発生に関与していることが示唆された。大動脈弁逆流は、大動脈基部の炎症を反映していると考えられ、冠動脈拡大およびCAL発生の予測に有用である可能性がある。