[II-P60-04] 学校心臓検診に心臓超音波検査を導入することは,学童の心停止予防に有用である - あいなんハートプロジェクト -
キーワード:冠動脈奇形, 学校心臓病検診, 院外心停止
【背景】自動体外式除細動器の普及により救命される院外心停止症例が増え,学童の院外心停止の半数以上が循環器疾患としての経過観察をされていない(予測不能な)症例であったこと,そして予測不能な心停止の原因の第一位が冠動脈奇形であることが報告されている.冠動脈奇形は心停止するまでほとんどが無症状であり,心電図所見も正常であるため,問診票および聴診,心電図検査からなる現行の学校心臓病検診では抽出できない.心臓超音波検査は,冠動脈奇形を抽出するために有用なモダリティであると考えられ,学校心臓病検診に心臓超音波検査を取り入れる試みを行った.【対象と方法】対象は愛媛県南宇和郡愛南町の小学校1年生および中学校1年生.2017年はモデル校として愛南町城辺小学校の1年生34名に対して,心臓超音波検査で冠動脈奇形を含めた心スクリーニングを施行した.2018年には,これを愛南町全域に拡大し,すべての小中学校1年生225名を対象とした.【結果】右冠動脈(RCA)が通常より左寄りから起始する例を冠動脈奇形疑いとして抽出.2年間,259名のうち4例(1.5%)が,今後の管理に検討を要する症例であった.内訳は,RCA低形成が1例,RCAが大動脈と肺動脈の間を走行し,RCAの狭小化が疑われる症例が3例であった.うち1例は,RCAの高位起始であった.なお,この他に軽度の弁逆流を3例(大動脈弁1例,僧帽弁2例),心電図検査では抽出できない,治療適応のある心房中隔欠損症を1例抽出した.【結論】心臓超音波検査は,現行の学校心臓病検診では抽出できない,冠動脈奇形の発見に有用であった.心臓超音波検査を組み合わせることにより,学校心臓病検診の精度向上が期待できる.本プロジェクトで症例を蓄積することにより冠動脈奇形の臨床像を明らかにして,適切な管理指導について検討することにより,学童の院外心停止が減少することが期待される.