[II-P60-06] 学校心臓検診におけるSTJ上昇例の判定に関する検討
Keywords:STJ上昇, STT振幅, Brugada症候群
【背景】小児では特に男子で高頻度に右側胸部誘導のJ点(STJ)の上昇がみられ、年齢とともに増加した(Heart Rhythm Scientific Sessions 2017)。一方、Brugada症候群でCoved型と呼ばれるSTJ上昇を伴う特異な波形がみられるが、両者の差異の検討は少ない。【目的】小児STJ上昇例のSTT部分の振幅を解析し、Coved型波形との差異を検討する。【方法】心疾患のない健康小中高、男女の心電図48,401件を対象として、小中高、男女別にV2誘導でのSTJ≧0.2mVの頻度、および高校生男女については、STJ、STJ+40ms, STJ+80msの振幅を計測し、既報のCoved型波形の特徴(Nishizaki, Heart Rhythm 2010; 1660)と比較した。【結果】V2誘導でのSTJ≧0.2mVの頻度は、小中高の男子でそれぞれ3.7%, 16.1%, 33.7%,女子で2.1%, 2.1%, 1.0%で、男子で年齢とともに増加した。このうち、高校男子STJ上昇2254例では、STJからSTJ+40ms間で振幅が低下、不変、増加する例数は、それぞれ3, 4, 2247例、STJ+40msからSTJ+80ms間ではそれぞれ2, 4, 2248例で低下例での値は、-0.01mV~-0.03mVであった。高校女子STJ上昇70例では、STJからSTJ+40ms間で振幅が低下、不変、増加例数は、それぞれ0, 0, 70例、STJ+40msからSTJ+80ms間ではそれぞれ0, 1, 69例であった。いずれの群でも振幅がSTJ>STJ+40ms>STJ+80msの例はいなかった。NishizakiらはCoved型波形を、STJ>STJ+40ms>STJ+80msとしており、今回の健康小児での変化の特徴と異なっていた。【考察】男児でよくみられるSTJ上昇は、心疾患と関連しない所見とされている。その成因は不明であるが、右室流出路付近の伝導遅延の関与が推察され、Coved型波形での活動電位の異常との違いがSTT部分に反映されると考えられた。【結論】V2誘導STJ上昇例では、STJの後のSTT振幅変化に正常波形とCoved型波形の差異があり、検診時の判定に有用である。【研究協力者】加藤太一、加藤愛章、鉾崎竜範、米山達哉