第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

学校心臓検診

ポスターセッション60(II-P60)
学校心臓検診

2019年6月28日(金) 17:30 〜 18:30 ポスター会場 (大ホールB)

座長:長井 典子(岡崎市民病院 小児科)

[II-P60-06] 学校心臓検診におけるSTJ上昇例の判定に関する検討

泉田 直己1, 岩本 真理2, 堀米 仁志3, 住友 直方4, 牛ノ濱 大也5, 吉永 正夫6, 田内 宣生7, 阿部 勝己8, 長嶋 正實7 (1.曙町クリニック, 2.済生会横浜市東部病院子どもセンター 小児科, 3.筑波大学 医学医療系小児科, 4.埼玉医科大学国際医療センター 小児循環器科, 5.大豪子どもクリニック, 6.鹿児島医療センター 小児科, 7.愛知県済生会リハビリテーション病院, 8.東京都予防医学協会)

キーワード:STJ上昇, STT振幅, Brugada症候群

【背景】小児では特に男子で高頻度に右側胸部誘導のJ点(STJ)の上昇がみられ、年齢とともに増加した(Heart Rhythm Scientific Sessions 2017)。一方、Brugada症候群でCoved型と呼ばれるSTJ上昇を伴う特異な波形がみられるが、両者の差異の検討は少ない。【目的】小児STJ上昇例のSTT部分の振幅を解析し、Coved型波形との差異を検討する。【方法】心疾患のない健康小中高、男女の心電図48,401件を対象として、小中高、男女別にV2誘導でのSTJ≧0.2mVの頻度、および高校生男女については、STJ、STJ+40ms, STJ+80msの振幅を計測し、既報のCoved型波形の特徴(Nishizaki, Heart Rhythm 2010; 1660)と比較した。【結果】V2誘導でのSTJ≧0.2mVの頻度は、小中高の男子でそれぞれ3.7%, 16.1%, 33.7%,女子で2.1%, 2.1%, 1.0%で、男子で年齢とともに増加した。このうち、高校男子STJ上昇2254例では、STJからSTJ+40ms間で振幅が低下、不変、増加する例数は、それぞれ3, 4, 2247例、STJ+40msからSTJ+80ms間ではそれぞれ2, 4, 2248例で低下例での値は、-0.01mV~-0.03mVであった。高校女子STJ上昇70例では、STJからSTJ+40ms間で振幅が低下、不変、増加例数は、それぞれ0, 0, 70例、STJ+40msからSTJ+80ms間ではそれぞれ0, 1, 69例であった。いずれの群でも振幅がSTJ>STJ+40ms>STJ+80msの例はいなかった。NishizakiらはCoved型波形を、STJ>STJ+40ms>STJ+80msとしており、今回の健康小児での変化の特徴と異なっていた。【考察】男児でよくみられるSTJ上昇は、心疾患と関連しない所見とされている。その成因は不明であるが、右室流出路付近の伝導遅延の関与が推察され、Coved型波形での活動電位の異常との違いがSTT部分に反映されると考えられた。【結論】V2誘導STJ上昇例では、STJの後のSTT振幅変化に正常波形とCoved型波形の差異があり、検診時の判定に有用である。【研究協力者】加藤太一、加藤愛章、鉾崎竜範、米山達哉