[II-P61-03] 心室ペーシングにより肺高血圧の改善を見た先天性完全房室ブロックの1例
キーワード:先天性完全房室ブロック, 肺高血圧症, 恒久的ペースメーカ植込み
【背景】母体抗SS-A抗体による完全房室ブロック(CAVB)は先天性CAVB(CCAVB)の原因の一つで、多くは徐脈が問題となる。徐脈による左心不全に伴い、肺高血圧(PH)の急速な悪化を認め、心室ペーシングにより改善した1例を経験したので報告する。【症例】日齢0の男児。母親は36歳2経妊1経産婦で、基礎疾患はなく、40週の検診時に初めて胎児徐脈を指摘され、近医で心拍数70回/分の徐脈、心拡大、心嚢水貯留を認め、帝王切開にて娩出後に精査加療目的で当院に搬送された。Apgarスコアは1分値7点、5分値8点で、仮死、心内奇形、胎児水腫はなかった。心電図でCAVBを認め、母体抗SS-A抗体1,200U/ml以上と強陽性であり、CCAVBと診断した。心室期外収縮も散発し、心拍数は60回台であったため、イソプロテレノール持続静注を開始し経過観察した。出生時の三尖弁閉鎖不全圧較差(TRPG)は30mmHgであったが、出生18時間でTRPG 60mmHgとPHの悪化、動脈管の右左短絡への変化(PG10mmHg)、呼吸状態の悪化を認めた。新生児遅延性肺高血圧症(PPHN)も考慮し、NOも使用したが、PDAの右左短絡のPGは25mmHgとさらに悪化した。CAVB、徐脈による低心拍出、左房圧上昇に伴うPHと判断。日齢1に一時的心外膜ペーシングを開始し、左室駆出率(EF)は50%と変わらなかったがTRPGは25mmHgと著明に改善した。母体免疫関連心筋症の可能性も疑いステロイドパルス療法とγグロブリン投与を行い、生後1ヶ月で恒久的ペースメーカ植込みを行った。生後6ヶ月になるが心不全症状はなく、EF 71%と心機能の回復も得られている。【考察】日本循環器学会の不整脈非薬物療法のガイドラインでは乳児の徐脈のペーシング植込みのclass1は心室レート55回/分未満となっている。しかし、胎児期からの徐脈及び免疫関連心筋症などにより、拡張予備能の少ない心室は過伸展から心不全に陥りやすく、慎重な管理を要し、ペーシングを開始するタイミングについて適切な判断が必要である。