[II-P61-05] Fontan術後患者の心不全評価における、肝細胞増殖因子の有用性
Keywords:肝細胞増殖因子, Fontan, 心不全
【背景】肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor; HGF)は,心不全や心筋梗塞,肺高血圧などの循環器疾患において,病態を反映する有用なマーカーであるとされている.しかしながら,先天性心疾患,とりわけFontan術後患者におけるHGFの有用性は明らかではない.【方法】 当院で2017年4月から2018年11月までの間に心臓カテーテル検査を行ったFontan術後患者20例を対象に,心臓カテーテル検査データと入院時のHGFを含む血液検査および画像検査データを検討した.HGFの有用性を評価する為,対象患者をHGF値に応じて2群に分類した; HGF<0.4 ng/ml(n= 10, HGF正常群),HGF≧0.4 ng/ml(n=10, HGF高値群).【結果】HGF高値群は,正常群と比較しCVPが有意に高値であった(13.1±0.7mmHg と10.6±0.6mmHg,p= 0.012). また,SvO2 はHGF高値群において,正常群と比較し有意に低値であった(58.0±1.7% と70.5±2.9%,p= 0.002).HGFとCVPとの間には,有意正相関が認められた(p= 0.003,r2= 0.384).また,HGFとSvO2との間には,有意な負相関が認められた(p=0.004,r2=0.376).一方,SaO2については,両群間で有意差は認めなかった.対象となった20例のうち,6例でカテーテルインターベンションが行われていた.カテーテルインターベンションが行われた患者は,行われなかった患者と比較しHGFが高値であった(0.45±0.02ng/mlと0.37±0.02ng/ml,p=0.05).Fontan術後患者に対するカテーテルインターベンションを識別する為のROC曲線では,HGF>0.405ng/ml で感度 71.4%,特異度 83.3%を検出しえた.【結語】今回,HGFがFontan術後患者において心不全を評価しうるマーカーである事を初めて報告した.また,HGFはFontan術後患者におけるカテーテルインターベンションの必要性を検出するマーカーとなりうる事も示された.