[II-P63-02] 小児補助人工心臓治療と弁逆流の検討
キーワード:小児補助人工心臓, 弁逆流, 心臓移植
背景】EXCOR補助人工心臓が認可されたが、ドナー不足から補助人工心臓装着期間が長期に及んでいる。この長期間の心臓移植待機を安全に乗り切るためには、VAD治療の予後を規定する三尖弁や大動脈弁などの弁逆流の制御が重要である。【目的】EXCOR装着例での僧帽弁逆流・三尖弁逆流・大動脈弁逆流のVAD装着前後の弁逆流の変化と外科的介入の効果を判定するために装着前後での弁逆流の程度を比較検討した。【対象】当院にてEXCOR装着した5例を対象。装着時平均年齢3.8±3.6歳(2か月-8歳)、平均体重10.2±4.7kg(5.5-16.2kg)、DCM 3例、NCLV 1例、cAVSD術後+ MVR後1例。【結果】渡航移植1例、国内移植1例、VAD離脱1例、補助継続2例。VAD装着時にMVP併施例1例、TAP併施例2例、弁手術を併施しなかった症例が2例。VAD装着前後でのMR:IV 度→II度(MVP施行例)、II 度→II 度、III度→0(ECMO症例)、IV度→II度(MVPなし)へ改善(MVR例を除く4例)。TR:III度→II度、I度*→II度*(TAP施行例)、IV度→II度、I度→I度、II度→I度(TAP施行例)。上記のI度*→II度*症例は装着後1年でIV度へ進行。AR:I度→0、0→0、I度**→I度**、0→0、0→0。このAR I度の残存例(I度**→I度**:cAVSD症例)はARがIII度に進行し、VAD装着後11ヶ月目に大動脈弁閉鎖術を施行。【考察】僧帽弁逆流に関してはMVPを併施しなくてもVAD装着により著明に改善する可能性がある。しかし、三尖弁逆流では装着直後はTAPを施行しなければ逆流が進行する症例が認められ、装着期間が長期になるとさらに進行する傾向にある。一方、VAD装着時にTAPを併施した症例では、装着直後からTRは改善し長期補助となってもTRの進行を予防できる可能性がある。大動脈弁閉鎖術を施行した症例はcAVSD術後の症例であり、大動脈弁3枚が不揃いであった。この大動脈弁閉鎖不全症の進行は大動脈弁の構造的な問題であり、VAD補助が直接的な起因ではないと判断している。