[II-P64-01] 先天性心疾患術後における、tolvaptanの安全性と有効性
キーワード:tolvaptan, 先天性心疾患術後, 利尿
【背景】先天性心疾患患者は,その循環動態や染色体異常の有無などにおいて多彩な臨床的背景を有する.その中で,先天性心疾患術後患者におけるtolvaptan有効性や安全性は明らかではない.また,先天性心疾患術後患者における適切なtolvaptan量も明らかにされていない.【方法】2014年11月から2017年12月まで間に,当院で先天性心疾患術後にtolvaptanを投与された62例を対象に後方視的検討を行った.tolvaptan投与前と投与1日後,7日後の尿量,体重の変化を評価した.また,基礎疾患,染色体異常の有無,血清Na値とtolvaptanの効果との関係性についても評価した.最後に,tolvaptan投与量と尿量,体重変化との関係についても評価した.【結果】対象となった患者62例(男児31例,女児31例)の月齢は11.7±0.6ヶ月であった.また,tolvaptanの投与量は0.23±0.02mg/kg/日であった.Tolvaptan投与1日後の尿量は,投与前と比較し142.9±5.2%増加し(p<0.0001),この増加は7日後においても維持されていた.62例のうち6例がその後死亡したが,生存例は死亡例と比較しtolvaptan投与後に有意な尿量増加を示し(148.6±5.2%と89.9±9.6%,p=0.0006),この傾向は7日後も持続していた.また,tolvaptan内服1日後の体重は,投与前と比較し1.62±0.35%減少した(p<0.0001).生存例と死亡例とで,体重の変化に有意差は認めなかった.62例のうち,16例でtolvaptan内服前に低Na血症を認めていた.このうち,15例でtolvaptan内服1週間後に有意なNa増加を認めていた.Tolvaptanによる利尿効果は,用量非依存性であった.心室形態(1心室か2心室か),腎機能,染色体異常の有無は,tolvaptanの効果に影響を与えなかった.【結論】先天性心疾患術後において,tolvaptanは臨床背景に関わらず尿量増加,体重減少,低Na血症の補正に寄与する.また,tolvaptanによる利尿効果は用量非依存性である.