[II-P64-05] 10kg未満のEXCOR装着児にサーモダイルーションカテーテルを用いた循環動態評価を行い、VAD離脱と限界を判断した2例
Keywords:補助人工心臓, 心不全, 循環評価
【背景】補助人工心臓(Ventricular assist device;VAD)を装着する大部分の児は心臓移植を目指すが、近年離脱可能例も報告されている。一方、経過中に高度の大動脈弁閉鎖不全を合併し心不全の改善が乏しい例がある。VAD装着後の循環動態評価及び自己心機能評価は主に心臓超音波検査及びサーモダイルーション(TD)を用いた心臓カテーテル検査が行われている。【目的】TDを用いた血行動態評価を行うことでVADからの離脱または限界を判断した症例を経験したので報告する。【方法】2016年の薬事承認以降当院で小児用補助人工心臓(EXCOR)を装着した5例中2例。全身麻酔下、大腿静脈アプローチにて5.5Fr小児用スワンガンツカテーテル(Edwards社)を挿入し、0℃のブドウ糖液を用いたTDによる心拍出量測定を行った。体格が小さく注入用側孔(先端孔より15cm)が下大静脈に位置してしまうため、2例とも右房内ループを作成することで問題なく熱希釈による循環動態評価が可能であった。【結果】症例1:3カ月女児、5.5kg。特発性拡張型心筋症、心不全。VAD装着後1か月頃より心機能の回復が見られた。VAD offでのTDを用いた心係数(L/min/m2)は4.4と良好でVAD装着後2ヵ月で離脱に成功し自宅退院となった。症例2:2歳女児、8.3kg。完全型房室中隔欠損症術後、高度左室収縮不全。VAD装着後半年より大動脈弁閉鎖不全が悪化し、心不全増悪が見られた。TDを用いた心係数はpump rate 105bpmで2.0、125bpmでも2.1に留まり現行の補助では限界であると判断した。後日大動脈弁閉鎖術を行い心不全症状は改善した。【考察】VAD装着後のTDを用いた循環動態評価は体格の小さな児でも右房内ループを作成することで可能だった。VAD離脱や設定変更の判断以外にも特殊な状況下ではポンプの限界を判断するのに有用であり、治療方針決定に不可欠であると考えられた。【結語】VAD装着中の循環動態評価、治療方針決定のためにTDは有用である。