[II-P68-04] 先天性心疾患を合併したダウン症候群の術後肺高血圧に対し早期から薬剤治療を行い改善をみた一例
Keywords:ダウン症候群, 先天性心疾患, 肺高血圧症
【背景】肺高血圧(PH)を伴う先天性心疾患(CHD)を合併したダウン症候群(DS)児では術後もPHが残存することが多く、軽度の残存PHでもPH発作を来した症例の経験がある。近年肺血管拡張薬が進歩したことから、DSの術後PHであっても正常化させ予後を改善させる事が出来ないかと考え、当科ではDS術後PHに対し術後早期から積極的に肺血管拡張薬による治療を行なっている。今まで6例に同治療を行なっているが、今回初めて無治療で肺動脈圧および肺血管抵抗の正常化をみている1例を経験したので報告する。なお2例は、治療中であるが正常化しており、心臓カテーテル検査で評価したのちに薬剤中止が考慮されている。【症例】7歳7ヶ月男児。36週4日、2084gで出生。染色体検査で21trisomyと判明。心臓エコー検査でAVSD、PDA、PLSVC、PHと診断。生後3ヶ月時にPA banding、PDA ligationを施行。術後、PH発作を2回きたし治療を要した。1歳1ヶ月時に心内修復術を施行。術後心臓エコー検査にてTR trivialとPH所見を認め、Tadalafil、Beraprost、Furosemide、Spironolactone内服とHOTを開始。1歳5ヶ月(術後3カ月)時に心臓カテーテル検査を行い、mPAP 21mmHgとPH残存を認め、同治療を継続。1歳11ヶ月(術後9ヶ月)時の検査でmPAP 27mmHgとPH増悪を認め、Ambrisentan内服を開始。2歳6ヶ月(術後1年4ヶ月)時の検査でmPAP 29mmHgとPH残存を認め、同治療を継続。4歳4ヶ月(術後3年2ヶ月)時の検査でmPAP 15mmHgとPH改善を認め、HOTを中止。以降、Beraprost、Tadalafil、Ambrisentanの順に薬剤中止し、6歳8ヶ月(術後5年半)時に治療終了。現在(術後6年半)も無治療無制限であり、心内修復術後から現在まで、気道感染罹患時を含め一度もPH発作を起こしていない。【結論】DSにおける術後残存PHに対して、術後早期からの積極的な治療が、PHの改善ひいては長期予後の改善につながる可能性がある。