[II-P69-03] 小児における重症 “肺動脈性” 肺高血圧症の病態を再考する
キーワード:肺動脈性肺高血圧症, 肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症, 肺血管拡張薬
【背景と目的】2018年の第6回世界肺高血圧(PH)シンポジウムにおいて、肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症(PVOD/PCH)が”PAH with overt features of venous/capillaries(PVOD/PCH) involvement”「PVOD/PCHの明確な特徴を有する肺動脈性肺高血圧症(PAH)」と変更され、PAHとPVOD/PCHがoverlapしうることが明確になった。このようなPAHの病態の幅広さが、一部の治療抵抗性PAHの原因を説明しうると考え、我々が経験した、治療に難渋した小児PAH4 症例を踏まえて検討する。【症例】全症例が先天性心疾患に伴うPAHであり、2 症例がtrisomy21、1 症例がtrisomy18、残る1 症例がVACTERL 連合であった。各々PAH の増悪を疑われ、各種肺血管拡張薬を開始、追加あるいは増量したがPH は不変もしくは悪化した。全症例で肺うっ血、間質性肺疾患を合併し、3 症例で肺胞出血を発症し、うち2 症例はICU 管理を要した。全症例でステロイドパルスを実施し、かつ2症例で肺血管拡張薬を減量・中止し、2症例で先天性心疾患に対する姑息術・根治術を施行した後、全症例で呼吸循環状態は改善し、急増していた血清KL-6値(最高値1,987~6,273 U/ml)も低下した。【考察】自験例では肺病理像は確認できていないが、各種の文献報告からもPAHはPVOD/PCHのみならず間質性肺疾患、肺胞出血ともoverlapしうること、それらの合併に先天異常症候群、呼吸器感染症、上気道狭窄、肺血管拡張剤が関与しうること、肺血管拡張剤はPVOD/PCHにおいて肺水腫を惹起するだけでなく、PVOD/PCH や間質性肺疾患の発生にも関与しうることが想定された。PAH が重症化し、肺血管拡張薬を開始あるいは増量しても改善しない場合には、肺血管拡張薬の不足だけではなく、肺毛細血管や肺静脈病変、肺実質病変の合併の可能性も考慮する必要がある。また、このような背景からは、小児PAHに対するupfront combination therapy の実施については、慎重に判断すべきと考える。