第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

肺循環・肺高血圧

ポスターセッション69(II-P69)
肺循環・肺高血圧 6

2019年6月28日(金) 17:30 〜 18:30 ポスター会場 (大ホールB)

座長:福島 裕之(東京歯科大学市川総合病院 小児科)

[II-P69-03] 小児における重症 “肺動脈性” 肺高血圧症の病態を再考する

永井 礼子1,2, 辻岡 孝郎2, 藤本 隆憲2, 谷口 宏太2, 佐々木 理2, 泉 岳2, 山澤 弘州2, 武田 充人2 (1.自衛隊札幌病院 小児科, 2.北海道大学 小児科)

キーワード:肺動脈性肺高血圧症, 肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症, 肺血管拡張薬

【背景と目的】2018年の第6回世界肺高血圧(PH)シンポジウムにおいて、肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症(PVOD/PCH)が”PAH with overt features of venous/capillaries(PVOD/PCH) involvement”「PVOD/PCHの明確な特徴を有する肺動脈性肺高血圧症(PAH)」と変更され、PAHとPVOD/PCHがoverlapしうることが明確になった。このようなPAHの病態の幅広さが、一部の治療抵抗性PAHの原因を説明しうると考え、我々が経験した、治療に難渋した小児PAH4 症例を踏まえて検討する。【症例】全症例が先天性心疾患に伴うPAHであり、2 症例がtrisomy21、1 症例がtrisomy18、残る1 症例がVACTERL 連合であった。各々PAH の増悪を疑われ、各種肺血管拡張薬を開始、追加あるいは増量したがPH は不変もしくは悪化した。全症例で肺うっ血、間質性肺疾患を合併し、3 症例で肺胞出血を発症し、うち2 症例はICU 管理を要した。全症例でステロイドパルスを実施し、かつ2症例で肺血管拡張薬を減量・中止し、2症例で先天性心疾患に対する姑息術・根治術を施行した後、全症例で呼吸循環状態は改善し、急増していた血清KL-6値(最高値1,987~6,273 U/ml)も低下した。【考察】自験例では肺病理像は確認できていないが、各種の文献報告からもPAHはPVOD/PCHのみならず間質性肺疾患、肺胞出血ともoverlapしうること、それらの合併に先天異常症候群、呼吸器感染症、上気道狭窄、肺血管拡張剤が関与しうること、肺血管拡張剤はPVOD/PCHにおいて肺水腫を惹起するだけでなく、PVOD/PCH や間質性肺疾患の発生にも関与しうることが想定された。PAH が重症化し、肺血管拡張薬を開始あるいは増量しても改善しない場合には、肺血管拡張薬の不足だけではなく、肺毛細血管や肺静脈病変、肺実質病変の合併の可能性も考慮する必要がある。また、このような背景からは、小児PAHに対するupfront combination therapy の実施については、慎重に判断すべきと考える。