[II-P69-04] 超音波診断装置による波動解析法を用いた肺動脈閉塞度の新たな非侵襲的評価方法の開発
キーワード:肺高血圧, 位相差, スペックルトラッキング法
【背景】肺高血圧の診療において肺小動脈の閉塞性病変の定量的評価は重要だが確立された方法はない。理論上、波動現象の2変数(圧力と流速)の位相差は位相角θで表され、動脈脈管の末梢の閉塞病変を反映する。我々は肺循環を波動現象としてとらえ、波動現象の位相差により、肺小動脈の閉塞度の新しい評価方法を開発することを目的に研究を進め、今までに小児の心臓カテーテル検査時に圧―流速同時測定ワイヤーにより位相角θを算出し、末梢肺動脈の閉塞度を反映していることを報告してきた。また我々は圧力データが血管内径データに置換しうることをシミュレーション回路の実験で示してきた。【目的】超音波診断装置を用いて、肺動脈血流速度と血管内径の位相差により、肺動脈閉塞度を非侵襲的に評価しうるか否かと検討することである。【方法】正常肺動脈圧の小児3例で主肺動脈長軸断面像にてパルスドプラ法にて肺動脈血流速度を、Speckle tracking法(radial strain)による肺動脈壁内径を計測し、その位相角θを算出した。使用機種はキャノンメディカル社Altida。心外膜面を肺動脈前壁に、心内膜面を肺動脈後壁と見なした関心領域を置き、Radial strainにより、一心周期内の変化曲線を求め、血管内腔径変化曲線とした。心電図QRSにより血流は径と時相を合わせ、位相角θを求めた。【結果】位相角θはそれぞれ-8.3°、8.6°、8.9°であった。【考察】良好な画像から得られたStrain曲線は、血管内腔径変化曲線を反映していると考えられた。肺高血圧の無い正常群では、位相角θは小さいことが予想されるが、今回の結果は予想値と合致している。【結語】本法が、超音波診断装置を用いた新たな肺動脈閉塞度の非侵襲的評価法としての可能性がある事を示唆している。今後、肺高血圧症例において検討を重ねていく必要がある。