[II-P70-01] Duchenne型筋ジストロフィー心筋症は細胞内Ca濃度上昇が原因となる
キーワード:Duchenn型筋ジストロフィー, 心筋症, iPS細胞
【背景】Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は四肢骨格筋症状に加えて、呼吸筋・心筋も侵される疾患である。症状は進行する立位・歩行困難からはじまり、呼吸不全や心不全をも認めるようになる。近年の在宅呼吸器療法の進歩により呼吸不全による死亡は劇的に減少し、現在の予後規定因子は進行する心筋症によるところが大きい。しかしながら、DMD患者の心筋症発症機序は未だ不明であり、治療は通常の心不全治療を行うにとどまる。【目的】今回 我々は、DMD患者から作製したヒトiPS細胞(iPSC)を用いて細胞内Ca濃度に注目し、心筋症発症機序解明を試みた。【方法】過去に心筋症発症報告があるExon44欠失型DMD患者の皮膚線維芽細胞から山中因子(Oct3/4, Sox3, Klf4, cMyc)を導入してiPSC(DMD-iPSC)を作製した。同時に患者のご両親からiPSCを同様の方法で作製し、正常コントロール(Control-iPSC)として使用した。【結果】DMD-iPSC、Control-iPSCからin vitroで心筋分化を行い、免疫染色においてDMD-iPSC由来心筋細胞のみジストロフィン蛋白の発現を認めないことを確認した。次に、indo-1を用いて蛍光細胞内Ca波形から細胞内Ca濃度を測定すると、Ca濃度のベース(R0)、ピーク(Rmax)、振幅(Rmax - R0)いずれにおいても有意にDMD-iPSC由来心筋細胞で高値であった。このDMD-iPSC由来心筋細胞とControl-iPSC由来心筋細胞のCa濃度は、各々の心筋細胞をストレッチチャンバーで伸展収縮負荷した時により有意に大きな差を認めた。【考察】これら結果から、細胞内Ca濃度上昇がDMD患者の心筋症発症に影響するとともに、心筋症発症予防や治療のターゲットとなることが示された。