[II-P70-02] ラット下大静脈絞扼術モデルを用いた下半身うっ血負荷が心肺に与える影響解析~フォンタン循環の病態解明に向けて~
キーワード:Fontan, Heat shock protein, High mobility group box-1
【目的】下半身うっ血負荷が心肺に与える影響を明らかにし、ファンタン患者における新たな病態生理の知見および治療戦略を模索すること。【方法】8週齢SDラット (メス、190~210g)に対して、挿管麻酔下で20G針相当(外径約1.1mm)の下大静脈絞扼術を施行した(IVCB群、n=5)。また、開胸のみのcontrol群(n=5)を作成し、2週間後に心肺の臓器障害レベルを比較検討した。【結果】IVCB群作成直後、心拍出量変化を小動物用ドップラー血流量計(transonic T402)で評価したところ、約1/2に低下していた (pre: 32.2±4.5ml/min vs. post: 18.7±3.2ml/min, P<0.01)。2週間後の生存率はIVCB群で8割、control群は10割であった。さらにIVCB群は全個体とも肉眼的に著明な肝腫大を認め、うっ血モデルとしての妥当性が確認できた。一方、2週間後の心拍出量はIVCB群とcontrol群で有意差は認めなかった(control群: 36.4±3.1ml/min vs. IVCB群: 35.1±4.1ml/min, P=N.S.)。また、心・肺組織におけるdamage associated mRNA(Col1、Col3、MMP9、TIMP1)はいずれも明らかな変化はなかったものの、心臓ではHSP (heat shock protein)70およびHSP90、肺ではHSP70、HSP90およびHSF1(hear shock factor-1)のmRNA著増が認められた。さらに、血漿中のHMGB-1(high mobility group box-1)が、IVCB群で有意に高値であった (control群: 0.27±0.12 ng/ml vs. IVCB群: 1.76±0.47ng/ml, P<0.01)。一方、組織染色では心・肺とも明らかな形態的変化は確認できなかった。【結論】ラット下大静脈絞扼術による下半身うっ血モデルにおいて、心・肺におけるheat shock proteinの上昇が見られ、何らかのストレス所見が示唆された。一つの機序として、うっ血下半身臓器からのHMGB-1を含む逸脱circulating factorによる炎症波及が考えられるが、さらなる検証が必要である。