第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスターセッション

心血管発生・基礎研究

ポスターセッション70(II-P70)
心血管発生・基礎研究 1

Fri. Jun 28, 2019 5:30 PM - 6:30 PM ポスター会場 (大ホールB)

座長:加藤 太一(名古屋大学大学院医学系研究科 成長発達医学)

[II-P70-03] 出生前デキサメサゾン投与によるラット胎仔心臓のHippo-Yapシグナル伝達経路への影響

中村 悠城1, 武半 優子1, 桜井 研三2, 松本 直樹1 (1.聖マリアンナ医科大学 薬理学講座, 2.聖マリアンナ医科大学 小児科)

Keywords:Hippo経路, グルココルチコイド, 胎仔

我々は以前から早産児モデルラットを用いて,出生前GC投与は胎児心臓の心筋細胞の増殖を促進させ,GCが心臓の発達に関わることを報告してきた.心筋細胞増殖のメカニズムには様々な経路が存在するが,近年,細胞増殖を制御するHippo-Yapシグナル伝達経路が注目されている.我々は出生前GC投与がHippo経路とその抑制因子であるAgrinに対する影響を検討した.Wister系妊娠ラット(8 週齢)の妊娠17日,19日に2日間デキサメサゾン(DEX) 0.5,1.0,2.0 mg/kgを皮下投与し,19日,21日にそれぞれ帝王切開し胎仔の心臓を摘出した(胎仔群).また妊娠20日, 21日に2日間DEXを同様に皮下投与し,自然分娩で出生した日齢1日の新生仔ラットから心臓を摘出した(新生仔群).対照群はDEX 溶媒のごま油を同容量投与した.さらに8週齢の成熟ラットの心臓を摘出し比較した(成熟群).Agrin,Yap,リン酸化Yap(p-Yap)の蛋白発現量はウエスタンブロット法,局在を免疫組織染色で検討した.
Agrin発現量は胎仔群,新生仔群では日齢とともに増加する傾向を認め,成熟群では有意に増加した.胎仔群ではGC用量依存的にAgrin発現量が増加する傾向を認めた.免疫染色ではAgrinは胎仔群,新生仔群とも心内膜側に,成熟群では心内膜側と血管周囲に局在していた.Yapおよびp-Yapの発現量は,21日目の胎仔群と成熟群は19日目の胎仔群よりも低下し,一方,新生仔群は19日目の胎仔群と同等レベルであった.出生前GC投与により19,21日目の胎仔群の全蛋白質量のYapとp-Yapの発現量は増加傾向を示した.核蛋白ではYap発現量は,GC 0.5, 1.0 mg/kg投与で増加傾向を,2.0 mg/kg投与で減少傾向を示し,p-Yapは殆ど検出されなかった.以上の結果から,出生前GC投与は胎仔の心臓において,Yapの発現に影響し,心筋細胞増殖に関与する可能性が考えられた.