[II-P71-02] 広範囲の心臓壁融解を来したブドウ球菌による劇症感染性心内膜炎
Keywords:感染性心内膜炎, 心室中隔欠損症, メチシリン感受性ブドウ球菌
6か月男児。小欠損の傍膜様部心室中隔欠損症(pmVSD)の診断で前医外来加療中であった。発熱、炎症反応上昇のため前医入院し、血液培養陽性のため抗菌薬二剤併用で加療されたが全身状態悪化したため発熱5日目に当院転院。転院時は心タンポナーデの状態で、4×6mmのpmVSDを認めたがValsalva洞動脈瘤はなく、明らかな疣贅や弁周囲膿瘍は認めなかった。心嚢穿刺での排液は淡黄色だったが、転院翌日に血性となりドレーンが閉塞し、外科的に心膜切開術を施行。血腫を伴う血性心嚢液を認めたが活動性出血は認めなかった。血液培養・心嚢液培養から同一株のメチシリン感受性ブドウ球菌を検出し感染性心内膜炎と確定診断、炎症は持続したが抗菌薬変更と免疫グロブリン療法を施行し発熱10日に解熱した。発熱11日目のエコーで大動脈前面に局所的な低エコー領域を認め、同部位には右冠尖と無冠尖の間から流入する血流と右室方向へと流出する血流が存在していた。感染による仮性動脈瘤と判断し同日緊急手術を行った。術中所見では心臓前面に仮性瘤を認め、瘤を剥離すると右室前壁と流出路中隔、Valsalva洞壁の一部が欠損し、右冠尖と無冠尖が露出し冠尖同士は弁輪部のみでかろうじて付着しているような状態だった。大動脈弁輪とValsalva洞壁を自己心膜で形成、VSDと右室壁はPTFEパッチで閉鎖した。術後抗菌薬を8週間投与し自宅退院。再燃はなく、術後は大動脈弁逆流1-2度で推移している。菌の侵入門戸は不明であり、免疫不全に関しては治療の影響が消失した後に精査予定である。感染性心内膜炎に伴う心室壁穿孔自体が稀であるが、本症では発熱10日前後で広範囲の心臓の壁を融解させるような急速かつ重篤な病態であった。