[II-PAL-03] Fontan循環における心筋エネルギー効率:心不全の治療ターゲット
Keywords:Caハンドリング, 心不全, フォンタン
【背景】Fontan患者の心ポンプ機能不全は慢性期の予後に影響を与える。心不全心筋細胞では、興奮収縮連関(E-C coupling)に携わる心筋細胞内のCaハンドリングの機能が低下しているとされ、新たな心不全の治療標的となっている。今回、Caハンドリングによる心筋のエネルギー効率が二心室循環と比べて単心室循環では低下しているという仮説を検証した。【方法】カテーテル検査時に圧容積関係を測定したFontan症例19例と二心室症例31例を対象とした。心筋酸素消費量(MVO2)は収縮期圧容積面積(PVA)から推定し、心臓の機械効率(Ve)は一回心仕事(SW)とPVAの比で算出した。心房ペーシング(160-180bpm)停止後6心拍のdp/dt Maxをペーシング前のdp/dt Maxを用いてindex化し、そのpotentiationと減衰を既に報告されている交代波状に指数関数減衰する波形:f(n) = a*exp[-1/τe*(n-1)]+c*exp[-1/τs*(n-1)]*cosπ(n-1)にfittingし、細胞内Ca再循環率Ca2+ recirculation fraction(RF) =exp(-1/τe)として算出した。【結果】MVO2が二心室症例群に比べてFontan症例では有意に高い(3.2±1.0 vs 2.6±0.5 mlO2/beat/100g, p<0.05)一方でSWはFontan症例では有意に低く(271.8±141.1 vs 204.8±65.3, p=0.04)、心筋での酸素消費が高いことが示唆された。これはVeが有意に低かった(P<0.01)ことからも支持された。さらに総Caハンドリング量には差を認めなかったが、フォンタン症例のRFが有意に低く(0.66±0.04 vs 0.77±0.02, p<0.05)、Fontan症例では心筋のエネルギー効率が低い可能性が示唆された。重要な結果として、RFは心筋の収縮力と後負荷に独立してVeと相関を示した(p<0.05)。【結論】Fontan症例では、E-C couplingにおける心筋酸素消費量が高いことが心機能に影響を与えている可能性が示唆された。細胞内Caハンドリングを改善する治療戦略がFontan循環のポンプ機能不全の進行予防に役立つ可能性が考えられた。