[II-PAL-04] 内皮細胞が誘導する一方向性平滑筋細胞遊走が動脈管内膜肥厚を形成する
キーワード:fibulin-1, versican, 内膜肥厚
【背景】動脈管閉鎖には血管平滑筋収縮と内膜肥厚が重要である。我々は、内膜肥厚形成には、PGE2がEP4受容体を刺激して産生されるヒアルロン酸を介し、平滑筋細胞遊走が促進することが重要であることを示してきた。【目的】内皮細胞の役割に着目し、平滑筋細胞が内皮へと方向性をもって遊走し、内膜肥厚を形成するメカニズムの解明を目的とした。【方法と結果】胎生21日目ラット動脈管初代平滑筋培養細胞(rDASMCs)のマイクロアレイ解析で、EP4刺激で最も発現が増加した遺伝子はFbln1だった(28倍, n=4-5, p<0.05)。Fibulin-1は、定量的PCRで約300倍、蛋白定量で約30倍と、EP4刺激で著明に増加した。Fibulin-1結合蛋白であるversicanは細胞遊走に関与し、心血管の発達段階の組織に分布する。ラット動脈管FACS解析より、fibulin-1は平滑筋由来、versicanは内皮細胞由来であることが示された。そこでfibulin-1とversicanに着目し、DASMCの内皮に向かう一方向性遊走を評価した。シリコン製インサートを用いrDASMCsとヒト内皮細胞を同一平面上で培養し評価した所、rDASMCsはEP4刺激後に内皮細胞方向へ著明に遊走した。siRNAを用い平滑筋細胞のfibulin-1または内皮細胞のversicanの発現を抑制すると、rDASMCsの内皮細胞への方向性を持った遊走は抑制された (n=6-18, p<0.05)。ヒト動脈管平滑筋細胞(hDASMCs)及び組織を用い定量的PCRと免疫染色を行った。hDASMCs でもEP4刺激でfibulin-1 mRNAは有意に増加した(n=7, p<0.05)。EP4とfibulin-1 mRNAは中膜と内膜肥厚部に同程度に発現していたが、versican mRNAは内皮を含む内膜肥厚部に有意に高発現していた(n=6, p<0.05)。免疫染色でも同様の発現が確認された。【結論】動脈管では、PGE2-EP4刺激でDASMCsからfibulin-1が分泌され内皮細胞由来のversicanと結合することで血管内腔側に向かう平滑筋細胞の一方向性遊走が生じ、秩序正しく内膜肥厚が形成される可能性が示された。