[II-PPAL-03] 患者由来iPS細胞を用いたHOIL-1L欠損症における拡張型心筋症発症機序の解明
キーワード:心筋症, iPS細胞, 基礎研究
【背景】心移植の原因疾患である拡張型心筋症は非常に予後不良に疾患である。近年その一つとしてHOIL-1L欠損症が報告されるようになってきた。HOIL-1L異常症は20番染色体に位置する領域の変異により発症する疾患であり、これまでに15の異なる遺伝子変異が報告されている。HOIL-1Lは生体内においてLUBAC(Linear ubiquitin chain assembly complex)と呼ばれる複合体の一部を担い免疫応答や炎症に大きく関わることが示唆されている。そのため、HOIL-1L異常症患者においては免疫不全様の症状や自己炎症疾患様の症状が臨床的にみられるが、同時にほとんどの症例で心筋症を発症し、心移植の対象となっている。拡張型心筋症発症・進行機序は全く判明しておらず、唯一分かっていることは、剖検献体の心筋・骨格筋細胞へ異常多糖類沈着を認めることである。現在、我々は患者由来iPS細胞を用いた拡張型心筋症発症・進行機序解明を試みており、研究の現状と今後の展望について述べる。【目的】患者由来iPS細胞を用い、HOIL-1L異常症の拡張型心筋症発症に繋がる機序を解明すること。【方法】骨格筋細胞モデルとしてマウス筋芽細胞C2C12細胞を使用し、CRISPR/Cas9システムでを用いてHOIL-1L変異株を作製、変異株由来骨格筋細胞の代謝動態異常を評価する。心筋細胞モデルとして患者iPS由来心筋細胞の代謝動態異常を評価を行うとともに、機能解析との関連から心筋症発症機序を解明する。【結果】患者iPS細胞から心筋分化を行い、同細胞においてPAS染色陽性の異常多糖類沈着を認め、心筋症発症の誘因になることが示唆された。【考察】HOIL-1L異常症において、異常多糖類の沈着が心筋症発症の一因となっている可能性があり、今後 心機能低下の関係性について機能解析研究予定である。