[II-S07-04] 4D flow MRIによるFontan術後体循環と肺循環の包括的評価
キーワード:Fontan, flow energy loss, 4D flow MRI
【目的】単心室形態やFontan循環では解剖が複雑で血行動態評価は従来の心エコー検査やカテーテル検査には限界がある。今回4D flow MRIによりFontan術後の血行力学的パラメータを検討した。【方法】2016年から2018年に当院で4D flow MRIを実施したFontan術後8症例10検査。原疾患は三尖弁閉鎖症2例、多脾症・下大静脈欠損2例、無脾症1例、その他単心室症3例。Fontan到達年齢は2.0-5.5(中央値2.2)歳。MRI撮像年齢は2.0-24.7(中央値15.2)歳。体表面積(BSA)は0.49 - 1.62 (中央値1.21)m2。4D flow MRIにより心室容積係数(EDVI/ESVI)と心拍出係数CIを算出、それらを健常ボランティア20名の計測値と比較した。また体循環(心房・心室・大動脈)、およびFontan循環におけるエネルギー損失(EL)を算出した。【結果】 Fontan群EDVIは91.4±9.9ml/m2で健常左心室EDVI(76.9±13.6ml/m2)と比較して有意に大きかった(p=0.006)が、CIは両群で有意差を認めなかった(3.47±0.88, 3.27±0.71L/min/m2, p=0.52)。体循環系EL/BSAはFontan群で1.64±0.70mW/m2で健常群(1.64±0.44mW/m2)と同等(p=0.99)でありCIと相関を認めた。またFontan循環内EL/BSAは0.33±0.12mW/m2でCIやカテーテル検査で得られた肺血管抵抗や肺動脈径とは相関を認めなかったが、下大静脈欠損例、心房肺動脈吻合(APC)例、心尖下大静脈同側例、導管狭窄例で高値を示し、APC例ではTCPC conversionによりCI増加とEL減少を認めた。また導管狭窄例では狭窄の進行に応じELが増加し、主心室拡張障害の治療に応じCIも増加した。【結語】Fontan症例では心拍出量や主心室のエネルギー損失は健常左室と同等であった。またFontan循環におけるエネルギー損失は肺血管抵抗や体循環の血行動態よりも静脈系の解剖と吻合形態の影響を受けて決まり、主心室のエネルギー損失とは独立した心負荷を反映することが示唆された。