第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム7(II-S07)
Extra-cardiac TCPC 20年の総括と次の10年への提言:基本術式となったExtra-cardiac TCPCを改良するための検証

2019年6月28日(金) 08:30 〜 10:00 第1会場 (特別会議場)

座長:坂本 喜三郎(静岡県立こども病院)
座長:山岸 正明(京都府立医科大学 小児心臓血管外科)

[II-S07-05] Tailor made TCPC -心拍数管理を併用した開窓型TCPC循環の可能性-

齋木 宏文, 桑田 聖子, 高梨 学, 菅本 健司, 増谷 聡, 先崎 秀明 (北里大学 小児科)

キーワード:フォンタン循環, 心血管機能, 心不全

背景:フォンタン手術はTCPCの導入によりエネルギー損失の少ない肺血流の確立が可能となったが、この循環の特徴である前負荷予備能低下と後負荷増強により遠隔期に心機能に問題をきたす症例が少なくない。開窓は理論的にこれらの問題を一元的に解決しうる手段であるが、これまでその有効性は明らかにされていない。開窓の有効性は心室拡張能および心拍数に影響を受けることに注目して、開窓が心血管リモデリングを予防しうるという仮説を検証した。対象と方法:開窓型TCPC手術を施行した35症例のうち11例が抗凝固・血小板薬使用下に1年以内に自然閉鎖した。まず開窓自然閉鎖症例(CF)と開窓維持した症例(PF)に対して心室圧容積関係を構築し安静時およびドブタミン負荷(DOB)時の心機能解析を行った。更に開窓試験閉鎖(TFO)を行い、DOB負荷および心房頻拍ペーシング反応を前後で解析した。結果: 開窓自然閉鎖症例は開存例よりも酸素飽和度が高いにも関わらず、心拍数、中心静脈圧、肺血管抵抗が有意に高く、また前負荷が低かった。またDOB負荷では閉鎖群のみ心室拡張期スティッフネスが増強した。同様に開存群におけるTFOでも前負荷・一回拍出量が有意に減少し、後負荷・心拍数と拡張期心室スティッフネスが有意に増加する所見が再現された。開窓開存時に認められた心室血管系負荷の大幅な軽減は頻拍ペーシングによって失われた。開存群は閉鎖群と比べてSaO2低値が唯一の血行動態的短所であったが、酸素運搬能、RAS系、心不全/線維化マーカーの増悪はなかった。結論: 慢性期フォンタン循環において開窓は頻拍を避けられる管理下であれば前負荷確保・後負荷低下・中心静脈圧低下・心拍数低下・心室機能保持の点で極めて有利であり、遠隔期フォンタン不全を予防する重要な戦略となる。