第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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シンポジウム

シンポジウム8(II-S08)
心室中隔

Fri. Jun 28, 2019 4:00 PM - 5:30 PM 第1会場 (特別会議場)

座長:安河内 聰(長野県立こども病院 循環器センター)
座長:早渕 康信(徳島大学病院 小児科 地域小児科診療部)

[II-S08-06] 拡張型心筋症における肺動脈絞扼術効果を心室中隔の動きから考える

真船 亮, 小野 博, 林 泰佑, 進藤 考洋, 三崎 泰志, 賀藤 均 (国立成育医療研究センター 循環器科)

Keywords:Dilated cardiomyopathy, Pulmonary atrtery banding, ventricular septal

【はじめに】
近年,乳児拡張型心筋症(DCM)に対して肺動脈絞扼術(PAB)を施行することで心機能が回復し,心臓移植や心室補助循環装置(VAD)を回避できたという報告が散見される.PABにより右室圧が上昇し, 心室中隔が左方に偏位して左室拡張末期容積(LVEDV)が減少し, 僧帽弁閉鎖不全の改善,Frank-Stalingの法則すなわち心筋の収縮エネルギーは心筋線維の収縮直前の伸び長に比例するという法則にのっとり, 左心収縮が改善すると考えられている.本邦では未だ報告がなく, 本治療を施行した症例の心機能の経過を心室中隔の動きから考察する.
【症例】
1歳6ヵ月の男児.月齢3でDCMと診断.内科的な抗心不全治療への反応がみられず経時的に心不全が悪化したために,月齢7でPABを施行した.PABは右房圧, 肺動脈近位圧, 左房圧,体動脈圧をモニターし,最終的には両心房圧と体血圧を指標に絞扼径を決定した.術後4日に抜管し,術後11日目に一般病棟に転棟した.術後BNPは低下, PDE3阻害薬や利尿剤の減量を進めることができたが,現時点でPDE3阻害剤からの離脱には至っていない.
心エコー検査でのスペックルトラッキング法ではGLS:術前 -4.3%/術後 -3.4%, 中隔のpeak LS: 術前-8.56%/術後 -1.73%,左室自由壁のpeak LS: 術前 -3.58%/術後 -7.3%と変化した.Normalized radius of curvature (NRC)はLVESV-NRC 術前1.04/術後 1.74, LVEDV-NRC 術前0.97/術後 1.14であった.絞扼前と術後4ヶ月の心臓MRの測定ではLVEDVi:術前 321.3 ml/m2, 術後 296.1 ml/m2, RVEDVi: 術前75.5 ml/m2, 術後 121.9 ml/m2, LVEF 術前12.6%, 術後14%, CI 術前3.1 L/min/m2, 術後 3.19 L/min/m2であった.
【考察】
 PAB施行し心室中隔の左方偏位によりLVEDVが減少し, 僧帽弁閉鎖不全の改善が得られたが, 心機能の改善には至っていない.心室中隔を介した心室連関作用においては, 右室圧の上昇が左室拡張障害を悪化させるという報告もあり, 今後症例の蓄積が必要である.