[II-TRP03-05] BWGにおける心筋保護液注入方法の検討
キーワード:BWG, CP, CPB
【諸言】左冠動脈肺動脈起始症(BWG)は発症率0.5%以下の稀な症例で体外循環(CPB)管理は難しく心筋保護操作も特殊である。BWGのCPBで心停止するには大動脈側と肺動脈側の各冠動脈に心筋保護液(CP)を注入する必要がある。今回3方法のCP注入で安全な方法を検討した。【対象】2018年7月~12月までのBWG根治術を行った3症例を対象にした。(症例1)3歳女児,体重4.2kg、BSA0.25cm2 (症例2)7歳男児、体重28.6kg、BSA0.98cm2(症例3)1ヶ月男児、体重3kg、BSA0.2cm2。【方法】大動脈側冠動脈の心筋保護システム(CPS)にはLiva Nova社製BCD Vanguardを使用した。肺動脈側冠動脈のCPSは次の3方法とした。症例1は術野でのシリンジ注入法(1)、症例2はCPSの先端回路をY字とした2本同時注入法(CP2)、症例3は落差方式のCPS(CP3)である。また症例1,3にはCrystalloid CP(CCP)を使用し、症例2にはBlood CP(BCP)を使用した。各症例で心停止までの時間とdeclamp後再拍動までの時間計測を行い比較検討した。またCPSの先端圧が測定できないため実験で得た各流量での回路内圧と先端圧のデータを基準に操作を行った。【結果】各症例の心停止までの時間はCP1 34sec、CP2 31sec、CP3 14sec、再拍動までの時間はCP1 284sec、CP2 6sec、CP3 142sec、Clamp timeはCP1 187sec、CP2 32sec、CP3 332secであった。3症例とも速やかな心停止が得られ心臓の再拍動も問題なかった。【考察】簡便なCP2はone pumpでCPを同時注入できCCPからBCPへのconvertも迅速に対応できる有効な方法だが先端回路がY字のためカニューレの先当りなどによる注入圧変化の細心な監視が重要となる。CP3は安全に操作できるがCPSが2系統必要でCCPからBCPへのconvertも難渋する。CP1は注入圧が測定できないことが課題である。以上より圧測定方法の問題を解決することでCP2が最も有効な方法だと考えられる。【結語】総合的に判断し当院のCPSにおいてはCP2を使用することで円滑で安全な管理が可能である。