[II-YB03-02] Fontan術前のカテーテル検査時に簡易的な心臓電気生理学的検査を付加する意義
キーワード:Fontan, EPS, 不整脈
【背景】不整脈は重篤なFontan(F)術後合併症の一つであり、心不全や突然死の原因となりうる。F術の改良に伴い不整脈の発生頻度は減少しているが、無脾症に伴うtwin AV nodeなどの不整脈器質を背景とするPSVTの可能性を考慮する必要がある。またF術後、心房へのアクセスが困難となるため、術前に不整脈の評価や治療介入できることが望ましいが、専用の電極カテーテル・解析装置を用いた詳細な心臓電気生理学的検査(EPS)を全例に行うことは現実的ではない。当施設では2012年より一般的なF術前の評価に追加して簡易EPSによる不整脈の評価を行っている。【目的】F術前の不整脈評価における簡易EPSの有用性を検討した。【方法】簡易EPSは血行動態評価に続き以下の通り行った。1)心房と心室に一時ペーシング用のカテーテルを留置、2)心房および心室連続刺激:120bpmから10bpmずつ240bpmまで漸増、3)心房および心室の単発期外刺激:刺激間隔を10msec毎、不応期まで短縮。簡易EPSによる不整脈の誘発性について評価した。【結果】2012年1月から2018年12月までの間、34例(無脾症4例)に対し簡易EPSを行った。全身麻酔下で検査を行い、簡易EPSに要した平均時間は14分であった。2例で簡易EPSによりPSVTとVTが誘発され、1例で簡易EPSではなく心房内操作による期外収縮でPSVTが発生した(不整脈発生率 8.8%)。PSVTの2例に対しては詳細なEPSを後日施行し、twin AV nodeによるAVRT(無脾症)と、AVNRT(左心低形成症候群)を認めた。ともに再現性をもって頻拍が誘発され、引き続きカテーテルアブレーションを施行した。1例はF術に到達し、1例は待機中である。【考察】簡易EPSは一般的なF術前のカテーテル検査の環境下において、短時間で不整脈の評価ができる有用な検査である。しかし非リエントリー性の心房頻拍や細動の予測には必ずしもならないこと、全身麻酔の不整脈誘発性、洞機能・房室伝導能への影響などが限界として挙げられる。