第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

医療安全講習会

医療安全講習会(ビデオ)(III-MSS)

2019年6月29日(土) 07:30 〜 08:30 第5会場 (中ホールB)

座長:鈴木 孝明(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓外科)

[III-MSS-02] (ビデオ上映)Shared Decision Making <SDM> とは何か:新しい医療コミュニケーションとして

中山 健夫 (京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻健康情報学分野)

キーワード:意思決定, EBM, Shared Decision Making

臨床上の困難な意思決定に向き合う時に、新たな方策としてShared Decision Making (SDM)への注目が世界的に高まりつつある。SDMは、患者と医療者が対話を通じ、それぞれの視点から治療の選択肢について考えを交わし、協力・協働して決定に向かう過程であり、患者と医療者それぞれの意思決定と、両者の合意形成が並行して行われる。インフォームド・コンセントは医療者の想定する選択に向けて、患者の同意を得られるように医療者が説明を行うものであるが、SDMは患者と医療者が何を選んだらよいか分からない「不確実な状況」で、協力して解決策を見い出そうとするものである。
SDMにおいて患者・家族と医療者に共有される内容は、大きく、「(双方の)情報」「目標」そして「責任」であり、双方向性・交互作用、時間と共に変化する過程を持つコミュニケーションがその基盤となる。このようなコミュニケーションに際して医療者は患者に対し, 価値観の尊重, 葛藤への共感, 必要な時間を待ち, 患者・家族がそれぞれの選択肢のメリット、デメリット、リスクをどう認知していくか、自分自身の価値観と折り合いを付けて行く過程の支援などが求められるであろう. 医師が診断結果と選択肢を一方的に患者や家族に預けて意思決定を求めることは, SDMと似て非なる行為であり、SDMは患者・家族と医療者のそれぞれの意思決定と共に、関係する人間が責任を共有するconsensus development合意形成の役割を担うものとなる。
講演ではSDMの前提となる根拠に基づく医療(EBM)の理解から始めて、医療における新しい可能性を持つコミュニケーションとしてのSDMの意義を紹介したい。