[III-OR30-04] 重症肺動脈弁欠損症候群の救命:LeCompte手術の利点と注意点
Keywords:肺動脈弁欠損症候群, LeCompte手技, 気道閉塞
【背景】肺動脈弁欠損症候群は呼吸器症状が主体となることが多く重症度は広範囲にわたる。中でも新生児期・乳児期早期に手術介入を要する重症型肺動脈弁欠損症の治療成績は不良である。LeCompte手術はこうした例で有用とされる。【対象】胎児診断されていた2女児例に対し生後0日、2か月,人工呼吸管理導入後直ちにLeCompte手術を実施した(日齢0例は出生直後に肺破裂合併)。併存心疾患はTOF、DORV(TOF型)で、1例に右胸心(dextroversion)を、他例にPHACE症候群を認めた。【手術】LeCompte手術は右肺動脈切離・広範囲の授動後、大動脈前方で再建、その後両側肺門部間で広範囲の左右肺動脈前壁切除・縫縮を行った。引き続き心内病変を修復し、肺動脈弁再建は肺動脈弁輪部上自己主肺動脈前壁flapの翻転(一弁形成)1例、PTFE膜によるNunn弁型形成を1例に行った。いずれも二期的胸骨閉鎖を選択した。【結果】循環・呼吸状態は術直後から安定して経過し、術後人工呼吸器期間は5、18日であった。2カ月例は呼吸器症状なく術後7年経過しているが、両大血管右室起始合併例ではLeCompte手技の結果後方に牽引された上行大動脈による左気管支圧迫を生じ、再手術(肺動脈延長を含む大動脈・肺動脈の前方挙上)を検討している。【考察とまとめ】胎児期から著明に拡張した肺動脈による並走する気管分岐部・気管支の圧迫・閉塞は重症型では肺内にまで及び、陽圧呼吸は肺実質障害の増悪や肺破裂により予後不良因子とされる。肺動脈の減圧・縫縮のみでは気道への圧迫は解除できず、「並走する肺動脈を気管・気管支から分離・隔離するLeCompte手技」が救命に有用である。大動脈がより前方に位置する例ではLeCompte手技による大動脈の後方への過剰な牽引などにより気道の再圧迫・狭窄を生じる可能性もある。本疾患に対する初回手術は救命的姑息術とし、人工物の補填による肺動脈延長などの対処が必要となる例も存在する。