[III-OR31-01] 左右短絡先天性心疾患における酸化ストレス
キーワード:酸化ストレス, reactive oxygen metabolites, 先天性心疾患
【背景】酸化ストレスは心筋リモデリングに関与する因子として近年注目され成人の心不全重症度や心臓死の予測因子であることが報告されているものの小児領域では明確でない部分が多い。【目的】(1)小児における酸化ストレス動態の正常値を探索する。(2)左右短絡先天性心疾患における酸化ストレスの役割について検討する。【方法】対象は浜松医科大学小児科にて心臓カテーテル検査を施行した侵襲的治療未施行の左右短絡先天性心疾患患者40例(CHD群)と健常小児105例。酸化ストレスマーカーは血中derivatives of reactive oxygen metabolites(ROM, 成人基準値250-300U.CARR)を測定した。まず健常小児におけるROMの動態について検討し、続いてCHD群と健常小児の中からage, gender-matchした40例(対照群)につきROMを含めた各種パラメータについて比較検討を行った。【結果】CHD群(男児21例、女児19例)の年齢は中央値9.5か月(IQR2.8-32.0か月)であった。心疾患の内訳は心室中隔欠損27例、心房中隔欠損8例、動脈管開存4例、房室中隔欠損1例であった。健常小児においてROMは新生児期から年齢(月齢)と有意な正の相関を認めた(r=0.482, p<0.001)。またCHD群(292±84U.CARR)の血中ROMは対照群(199±82U.CARR)に比べ有意に高値(p<0.001)であり、ROMは肺体血流比(r=0.333,p=0.022)、左室拡張末期容積%(r=0.503,p<0.001)、右室拡張末期容積%(r=0.771,p<0.001)と有意な正の相関を認めた。【結語】(1)酸化ストレスの指標であるROMは小児期には年齢と共に緩やかな上昇傾向を認め、新生児早期に上昇を認めた後に低下し定常状態となるNT-proBNPとは異なる推移を辿ることが確認された。(2)左右短絡先天性心疾患においてROMは少なくとも容量負荷を反映するマーカーであることが示唆された。