第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

自律神経・神経体液因子・心肺機能

一般口演31(III-OR31)
自律神経・神経体液因子・心肺機能

2019年6月29日(土) 08:30 〜 09:30 第5会場 (中ホールB)

座長:石川 貴充(浜松医科大学医学部 小児科)
座長:本田 崇(北里大学医学部 小児科)

[III-OR31-05] 若年のファロー四徴症術後患者のNT-pro BNP値上昇の背景

藤部 ゆり, 浜道 裕二, 小林 匠, 吉敷 香菜子, 稲毛 章郎, 上田 知実, 矢崎 諭, 嘉川 忠博 (榊原記念病院 小児循環器科)

キーワード:ファロー四徴症術後, reRVOTR適応, NT-proBNP値

【背景】ファロー四徴症の心内修復術後(TOFpo)に、右室流出路再検(reRVOTR)を必要とする場合がある。そのような症例では右心系負荷に反応してNT-proBNP値が上昇することがあるが、若年期においてはNT-proBNP値の上昇の原因が不明にみえる。【目的】若年期のTOFpo患者においてNT-proBNP値上昇がreRVOTRの目安となるか、またNT-proBNP値上昇の背景は何か調べた。【方法】対象は2010年~2018年にカテーテル検査を施行された1~14歳のTOFpo患者124例。reRVOTR適応基準を、RVEF<40%(又は45%)、RVEDVI≧170ml/m2(又は150 ml/m2)、RV/LV圧比≧0.80(又は0.70)の6基準とした。まず、NT-proBNP値により、これらの適応基準を見出すROC曲線を描くことができるか調べた。【結果】上記reRVOTR適応基準の6項目いずれにおいても、NT-proBNP値による有意なROC曲線を得ることはできなかった。次に、NT-proBNP高値を予測する有意なROC面積を描くことができたのは、肺動脈係数(ROC面積0.657:p=0.018)、右室拡張末期圧(同0.661:P=0.012)、右房圧(同0.665:p=0.012)、術後期間(同0.309:P=0.003)の4因子。すなわち、NT-proBNP高値に関与するのは、大きい肺動脈係数、高い右室拡張末期圧及び右房圧、短い手術後からの期間であった。NT-proBNP高値に、reRVOTRの適応基準となるような右室機能、左室機能、染色体異常、術前の肺動脈形態、右室流出路の術式は関与しなかった。【まとめ】TOF術後の若年者において、NT-proBNPの上昇でreRVOTR適応の予測をすることは困難である。若年TOF術後患者のNT-proBNP高値には、右心系の負荷による右室拡張末期圧/右房圧の上昇の他に、術前のhigh flowの影響、心内修復術による血行動態の変化の影響がある程度関与していると考えた。