[III-OR32-03] 川崎病による冠動脈瘤退縮後の成人期の心事故
キーワード:川崎病, 冠動脈瘤, 急性冠症候群
(背景)川崎病(KD)罹患後選択的冠動脈造影(CAG)で冠動脈瘤(CAA)と診断され、遠隔期のCAGで“退縮”が確認されることは少なくない。KD罹患後遠隔期のCAGで退縮が確認され、治療と経過観察が中止されていたが、成人期に心事故をきたした4例を報告する。(結果)全例男性で、急性心筋梗塞(AMI)2例、冠動脈バイパス術(CABG)1例、突然死1例であった。KD罹患は8か月-5歳、経過観察の中止は7歳-19歳、心事故発症は26-43歳で、3例に喫煙歴があった。2例ではKD罹患後3ヶ月以内にCAGが施行され、両側にCAAがあった。うち1例では、最大CAA径は、RCA 5.7mm LCA 7.1mmで、19歳時の血管内エコー検査で、退縮部位に軽度の冠動脈の壁肥厚が確認されていた。AMIの発症状況は飲酒後1例、運動中1例で、突然死の1例は就寝中であった。AMIの責任病変はそれぞれセグメント5とセグメント6で、2例に血栓吸引が施行され、1例に冠動脈ステントが留置された。2例とも広範囲前壁梗塞による低心機能のため術後IABPのサポートが必要であった。うち1例は遠隔期に左心室内血栓による脳梗塞を発症した。急性期にCAGが施行されていなかった2症例では、遠隔期に退縮が確認され、心事故時に両側冠動脈の石灰化が確認された。CABG症例は無症状であったが、他の目的で胸部CTが施行された際、冠動脈に石灰化があり、CAGで石灰化があったセグメント1に右冠動脈の90%狭窄、左冠動脈分岐部に新たなCAAと左主幹部に75%の局所性狭窄が見られた。(まとめ)急性期に5-6mm以上のCAAがあり退縮した症例では、成人期に心事故を発症しうるため、年単位の長期的な定期的な経過観察が必要である。KDによる冠動脈障害は、左主幹部を含めた冠動脈近位部が多いため、ACSを発症した場合、低心機能や突然死にいたりうる。中等瘤以上の退縮例については、成人期での抗血小板薬の継続、再開についての検討が必要である。禁煙を含め、患者への教育が必要である。