第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

成人先天性心疾患

一般口演35(III-OR35)
成人先天性心疾患 2

2019年6月29日(土) 09:30 〜 10:20 第6会場 (小ホール)

座長:益田 宗孝(横浜市立大学附属病院 外科治療学)
座長:星合 美奈子(山梨県立中央病院 小児循環器病センター)

[III-OR35-03] Fontan術後TCPC conversionの効果と中期遠隔期成績

金谷 知潤1, 山内 早苗1, 上野 高義1, 木戸 高志1, 奥田 直樹1, 荒木 幹太1, 渡邊 卓次1, 富永 佑児1, 成田 淳2, 石田 秀和2, 澤 芳樹1 (1.大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科, 2.大阪大学大学院医学系研究科 小児科)

キーワード:Fontan, TCPC conversion, 成人先天性

【背景】
Fontan術(F術)の変遷に伴い、遠隔期における不整脈や心不全などが次第に明らかとなり、total cavopulmonary connection(TCPC) への転換が行われるようになった。今回、当院におけるF術後、TCPC conversion(TCPC-C)の効果を検討し報告する。
【対象と方法】
対象は、当院でTCPC-Cを施行した16例。初回F術時の年齢は中央値7(2-37)歳で、F術式はAtrio-pulmonary connection 9、lateral-tunnel 4、Bjork 3例であった。F術後観察期間は28(21-35)年で、F術後20(10-28)年でTCPC-Cを行った。TCPC-C後の中期遠隔期成績とその効果を検討した。
【結果】
TCPC-C前の症状は、自覚症状なし(不整脈既往) 4、易疲労感 5、腹水貯留 4、NYHA III相当の心不全 3例で、TCPC-C時、11例にペースメーカー植込(PMI)、8例にMaze手術、3例に房室弁置換、1例に房室弁形成を併施した。
TCPC-C後の観察期間は10年(1-20年)で、手術死亡はなく、遠隔死亡は1例(高度心不全に対しTCPC-C+房室弁置換。術後14年、肝不全で死亡)であった。
TCPC-C前後でCVPは13(9-23)→14(8-30) mmHg、CIは2.4(1.5-3.8)→2.3(1.6-3.1) L/min/m2と差はなかったが、術前易疲労感のあった5例はいずれもPMIもしくはMaze手術が併施されており、自覚症状の改善が得られた。一方、術前より腹水を有する4例はいずれもPMIもしくはMaze手術を併施し、2例で房室弁置換、1例で房室弁形成を行ったが、腹水の改善は得られなかった。また、高度心不全の3例(1例は遠隔死亡例)も2例にPMIもしくはMazeを併施し、1例にTCPC-C後14年でCRTを行ったが、いずれも心不全症状は改善しなかった。
【結語】
Fontan術後TCPC conversionは、CIやCVPなどデータの有意な変化はなかったが、PMIやMazeを併用することで症状の改善が得られた。腹水を有する症例や重症心不全例といったfailingした症例に対してはTCPC conversionでは対応不能であり、早期の手術適応を考慮する必要があると考えられた。