第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

電気生理学・不整脈

一般口演37(III-OR37)
電気生理学・不整脈 3

2019年6月29日(土) 08:30 〜 09:20 第7会場 (204)

座長:高橋 一浩(木沢記念病院 小児科)
座長:畑 忠善(藤田医科大学大学院 保健学研究科)

[III-OR37-01] 学校心電図検診における心房中隔欠損の新しい抽出基準を検討する

鉾碕 竜範1, 上田 秀明2, 若宮 卓也2, 青木 晴香1, 黒田 浩行1, 中野 裕介1, 渡辺 重朗1, 岩本 眞理3 (1.横浜市立大学附属病院 小児科, 2.神奈川県立こども医療センター 循環器内科, 3.済生会横浜市東部病院 こどもセンター)

キーワード:心房中隔欠損, 学校心臓検診, 抽出基準

【背景】心房中隔欠損症(ASD)は学校心臓検診で診断される代表的な先天性心疾患であるが,心電図検査における抽出基準は未だ定まっていない.【目的】学校検診対象年齢層のASD患者の心電図波形を解析することにより,ASD診断のための新しい抽出基準を作成する.【方法】2008年1月~2018年8月に治療を行ったASD患者(欠損孔径≧10mmまたはQp/Qs≧1.5)のうち,5-8歳を小学検診群(S群:263名),11-18歳を中高検診群(C群:90名)として治療直前の安静12誘導心電図を収集し,ASDに特徴的であるとされる既知の心電図所見,右脚ブロック(RBBB),V1誘導のrsR'パターン(Sの深さに関係なくr<R'であればrsR'パターンとする),軸偏位,T波異常(右側胸部誘導のT波不連続性またはV4誘導の陰性T波),II,III,aVF誘導のCrochetageパターン(CR),V6の幅広いS波(SV6)について調査し,正常対照群(N群)として年齢層を一致させた5-8歳,11-18歳の男女100名ずつ(計400名)と比較検討した.【結果】ASD患者353名の診断契機は学校心電図検診が43.6%,心雑音が45.6%,その他10.8%であった.各心電図所見の出現率は以下の通り(S群,C群,N群).RBBB(89.0%,85.6%,10.0%),rsR'(71.8%,62.3%,3.7%),軸偏位(37.6%,23.4%,6.2%),T波不連続性(54.0%,16.7%,0.3%),V4陰性T波(65.4%,21.1%,1.0%),II誘導CR(54.7%,59.0%,4.8%),III誘導CR(76.0%,77.1%,35.5%),aVF誘導CR(72.5%,77.1%,21.3%),SV6(55.5%,67.8%,8.8%).【考察】rsR',T波異常は特異度が高いが,rsR'以外のRBBBでもASDは否定できない.抽出条件を(1)rsR' (2)T波異常 (3)RBBB+軸偏位 (4)RBBB+II誘導CR のいずれかとすると,S群では92.4%,C群では76.7%が検出可能であった(感度:88.4%,特異度:93.7%).【結語】本研究で新たに提案する抽出基準は,学校心臓検診におけるASD検出に有用である.