[III-OR38-01] Fontan循環におけるフォンタン手術前の肺血管床の発育が予後に及ぼす影響
Keywords:肺血管床, Fontan循環, PA index
【背景】慢性期のFontan循環における臓器障害の主因は静脈鬱滞である。肺血管抵抗を低く保つための低肺血流戦略では、十分な肺血管床の発育が得られず、肺血流が鬱滞するFontan循環にとって慢性期には悪影響を及ぼす可能性がある。今回、Fontan手術までの肺血管床の最適な成長が慢性期に良好なFontan循環を維持し、臓器障害を予防するという仮説を検証した。【方法と結果】Fontan手術を施行された連続33例を対象とした(術後中央値5.3年)。Fontan術前および術後のfollow upのカテーテル検査時に肺血管症の発育の指標として肺動脈断面積指数(PA index)を測定した。血行動態に加え血液検査を施行し臓器機能について評価した。Fontan手術前のPA indexは74-426mm2/m2で肺血管抵抗は0.4-3.1IU/m2であった。Fontan術後中央値5.3年の検査では、心拍出量(CI)は静脈圧(CVP)上昇とともに低下しており、Fontan前に測定したPA indexと正の相関を示した(P<0.01, R2=0.3)。さらに、Fontan前のPA index高値は低いCVP(P=0.02, R2=0.2), 高いSpO2 (P<0.01, R2=0.12)とBNPの低値(P=0.03)と相関を示した。PA indexが小さい症例では、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAAS)の有意な亢進が認められ、肝うっ血の所見であるγGTP (P<0.01, R2=0.3)の上昇を認めた。肝予備能の指標であるインドシアニン・グリーン(ICG)15分停滞率はPAIと負の相関を示した (P=0.01, R2=0.2)。多変量解析では、PA indexは肺血管抵抗やfenestrationの有無に関係なく慢性期のFontan循環における高いCIと低いCVPに関係していた。【結論】Fontan循環に至るまでに肺血管床を育てておくことはCIを保ちつつ低CVPを維持し、臓器うっ血の少ないFontan循環成立に重要である。さらにそれは、RAAS系の活性化による心血管のリモデリングを防ぎ、さらなる慢性期の臓器障害の予防にも繋がると考えられる。